2015年02月09日 14:32 弁護士ドットコム
「くまモン」(熊本県)や「ひこにゃん」(彦根市)に代表される全国の自治体の「ご当地ゆるキャラ」。各地で人気が定着するにつれ、商標などをめぐる問題が出てきているようだ。徳島県小松島市の公式ゆるキャラ「こまポン」(写真は小松島市提供)はこのほど、まったく関係のない市外の企業によって、勝手に名前を商標登録されそうになり、危機一髪で難を逃れた。
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小松島市は、徳島市の南にある人口約4万人の小さな市。ジブリ作品アニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」のモデルとなった阿波狸合戦の「金長だぬき」で知られる。
「こまポン」は、こまつしまの「こま」と、狸を表す「ポン」から名づけられたらしい。源平合戦で市に上陸したとされる源義経にちなみ、鎧兜を身に着けたたぬきが、特産のちくわを持っている。
ところが、小松島市などによると、2013年6月、徳島市のある企業が、市には無断で「こまポン」の名称を特許庁に商標登録出願したという。
この動きを察知した市は、「こまポン」が登場する市の観光ガイドや地元紙記事などの資料を特許庁に提出し、「こまポン」と市の結びつきを主張して、登録を阻止しようとした。
結局、2014年7月、特許庁は、企業側の商標登録を拒絶した。その理由は、業者が登録しようとしている「こまポン」の名前が、「国や自治体などの機関の公益・非営利の事業を表す標章で、著名なものと同じ」と認められたからだという。
今回、論点となったのは、「こまポン」の名前が、「著名なもの」であったかどうかだった。
たとえ、自治体が作った公式キャラであっても、それだけで「著名」とは認められない。くまモンやひこにゃんと違い、全国レベルで名を知られているとは言えない「こまポン」が、「有名人」待遇をしてもらえるかどうか。
結局のところ、決め手となったのは、市の情報誌や各種イベントで活躍している「実績」だったという。地元での地道な活動が、特許庁にも認められたというわけだ。
かろうじて救われた「こまポン」だが、ゆるキャラブームが定着した今、これからも同じようなケースが出てくるだろう。特に「有名人」待遇を期待することが難しい、誕生したばかりのゆるキャラは注意が必要だ。
小松島市の担当者は「自治体の担当者は、特許庁のウェブサイトを定期的にチェックして、商標登録出願がなされていないかチェックしたほうが良い」とアドバイスしている。