2015年02月08日 12:01 弁護士ドットコム
熊本県で知人に「入れ墨」を施した自称彫師で暴力団幹部の男性が2月4日、医師法違反で逮捕された。男性は2012年7月~10月、自宅で知人男性の胸から膝にかけて入れ墨を施した疑いがもたれている。
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入れ墨と医師法がどう関係するのか。実は、医師免許を持たない者が他人に入れ墨を入れるのは「無資格医業」として、医師法に違反する行為なのだという。
だが、都心の街を歩けば、タトゥーやアートメイクの店が堂々と店を開いている。これらも入れ墨と同じような行為と思えるが、医師法には違反しないのだろうか。厚生労働省の担当者に話を聞いた。
「針先に色素をつけながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為は『医療行為』にあたります。そのため、医師免許を持たずに入れ墨やタトゥーを入れるのは、『医師でなければ、医業をなしてはならない』と定めた医師法17条に違反するのです」
厚生労働省医政局医事課の担当者はこう解説する。
その説明を裏付けるのが、厚労省が2001年に各都道府県にあてて出した『医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて』という通知だ。ここでは、「医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反する」行為の一つとして、〝色素を入れる行為〟をあげている。
「入れ墨、タトゥーの他に、アートメイクも色素を入れる行為です。通知ではこのほかに、ケミカルピーリングや、レーザー脱毛も医療行為としています」
眉や目元に針で色素を注入する「アートメイク」は女性の間で人気だが、これもやはり、医療行為にあたるのだ。もし医師以外の者が営業行為としておこなえば、医師法31条により「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」または「これを併科」ということになる。
だが、街中では、堂々と入れ墨店やアートメイクサロンが営業している。これらは本当に医師が施術しているのだろうか。数年前、芸能人が紹介する東京都内のアートメイクサロンで、眉とアイラインに施した女性はこう証言する。
「サロンに行くと、簡単なカウンセリングの後、そのままビルの別フロアにある皮膚科医院へ案内されました。医師は、『肌にトラブルはありますか?』と形ばかりの質問をして、1分もしない内に診察は終了。初診料と診察料を払ってからサロンに戻り、店の女性スタッフに施術されました。特に確認していないんですが、医師ではなかったはずです」
この女性は幸い、施術トラブルはなかったそうだ。しかし、厚労省の担当者は、あくまでも「施術者が医師でなければいけない」と指摘する。医院にお金を払った女性には気の毒だが、施術前後に医師の診察を受けても、安全性が保証されるわけではない。
では、医師が施術していないことを知っていた場合、客の側が責任を問われることはないのか。
「医師法で、客が罪に問われることはありません。ただ、自衛策として、医療行為にあたる施術を受ける場合には、店側に医師免許の提示を求めたほうが良いでしょう」
美は一日にしてならず。安易に飛びつかない慎重さと正しい知識が必要だろう。
(弁護士ドットコムニュース)