カート時代からヨーロッパを中心にキャリアを積み、現在はF3規定のユーロフォーミュラオープン・シリーズにフル参戦している金丸悠がオートスポーツweb編集部を訪れ、2015年シーズンに向けた意気込みなどを語ってくれた。
現在20歳の金丸は、全日本カート選手権などで活躍した後、2007年から欧州のカートレースへの挑戦を開始。08年からはWSKインターナショナルシリーズに参戦し、翌09年には同シリーズのKF2クラスで優勝、日本人初のWSRウイナーとなった。また、11年にはCIK-FIA世界選手権のKF1クラスを戦い、カートの世界最高峰カテゴリーとなるこのクラスで日本人初勝利を挙げるなど、快挙と言える実績を残してきた。
四輪デビューは2012年。フォーミュラ・ルノー2.0のユーロシリーズやNECシリーズで腕を磨き、昨年からはF3に挑戦。現在はスペインのバルセロナでひとり暮らしをしながら、F3の現行シャシーで争われるユーロフォーミュラオープンに参戦している。
スペインF3の流れをくむこのシリーズは、全8ラウンドの中にシルバーストンやモンツァ、スパをはじめ、F1開催コースでのレースも多数組み込まれているほか、参戦コストもFIAヨーロピアンF3の半分程度と比較的安価。ほとんどのラウンドで20台強のエントリーを集めており、金丸曰く「今のF3の中では2番目くらいにあたるシリーズ」だという。
そんな舞台ででF3デビューを果たした金丸は、開幕戦ニュルブルクリンクのレース1でいきなり3位表彰台を獲得。第2戦レース1での2位を最高位として、合計4回のポディウムフィニッシュを果たし、ランキング4位でシーズンを終えた。そんな金丸に、14年シーズンを振り返ってもらうとともに、今後へ向けての意気込みなどを聞いた。
Q:2014年はどんなシーズンでしたか?
金丸:開幕戦はすごく寒くて、練習からトップタイムがバンバン出るくらい調子が良かったんです。ただ、寒い時は結構速いものの暑くなるとダメになってしまうというチームとしての傾向があって、最初の2レースくらいは調子が良かったのですが、夏場は苦しかったですね。それに、クラッシュに引っかかったりということもあって、コンスタントにポイントを獲れなかったというのが大きかったと思います。
Q:今年も昨年と同じくエミリオ・デ・ビロタ・モータースポーツからシリーズを戦うそうですが、どんなチームなんでしょう?
金丸:亡くなったマリア・デ・ビロタさんの一家がやっているチームなんです。(マリアの)弟のエミリオがチームを回しているのですが、彼はフォーミュラ・ルノー3.5でポンズ・レーシングのチームマネージャーもやっているんですよね。その“コネ”が強いので今年もこのチームを選んだという面もあります。今年は何回か(Fルノー3.5での)テストのスケジュールも組んでもらったりしているんです。チームがスポンサーを見つけてきてくれたので去年よりは安く乗ることができて、その分をテストにあてるような感じです。
Q:他のチームへの移籍という選択肢もあったんですか?
金丸:(シリーズの)トップ3あたりのチームすべてからオファーも来ていたのですが、わざわざスポンサーを見つけてもらったりだとか、すごく良くしてもらったので、さすがに裏切れないなと(笑)。逆に、このチームで勝ちたいと思っています。
Q:今季に向けてチームの戦闘力は上がっていきそうですか?
金丸:蓋を開けてみなければ分かりませんが、今年はプレマからエンジニアを獲得したりしているので、(昨年の問題が)どこまで改善されるかですね。コンスタントに速く走れるようになれば、シリーズも全然狙える位置にいると思います。
Q:ところで、昨年のF3マカオGPにはカーリンから参戦しましたが、どのような経緯で乗ることになったんですか?
金丸:もともと、マカオに出られるチームはないかと今のチームに相談して探してもらっていたのですが、レースの1週間くらい前にカーリンのスポット枠が空いているという話がきたんです。「乗るんだったらその日のうちに中に返事をしてくれ」くらいの勢いでしたが、断る理由はありませんでした。
Q:予選レースでは日本人最上位となる13位をマークしていますよね。初のマカオGPはいかがでしたか?
金丸:事前のテストがなかった影響はありましたが、一番悔しかったのは決勝レースをほとんど走れていないことですね(※編注:スタート直後の混乱に巻き込まれてリタイア)。感触的にはトップ6、7は確実に入れたと思いますし、さらにその先の2台を抜けるか抜けないかくらいだと思っていました。
Q:ちなみに、マカオでは他の日本人ドライバーとも走ったと思いますが、どのように感じましたか?
金丸:チームも違ったので一概にはなんとも言えませんが、負けてはいないとは思いました。F3はチームでかなりばらつきがあるので、どこまでがドライバーでどこまでがチームかというのは分からない部分もありますけどね。
Q:やはり、最終的に目指しているのはF1ですか?
金丸:最終目標はF1ですね。現実的には大きな企業の後押しがないと乗れないと思っているので、スーパーフォーミュラに参戦して結果を残すというのもひとつの手だと思っています。もちろん、Fルノー3.5などでインパクトを残せれば、それはそれで可能性は広がっていくと思いますし、(今後どうしていくかは)悩みどころではありますね。
Q:ところで、現在はバルセロナでひとり暮らしということですが、言葉の面や文化的な違いによる難しさは感じますか?
金丸:英語は問題ないのですが、スペイン語はかなり苦戦していて、まだ全然うまく話せないです(笑)。でも、スペインの方は優しい人が多くて、こっちが分からないとゆっくり話したりしてくれますよ。
Q:それでは最後に、今季への意気込みをお願いします。
金丸:1シーズンを戦って、後半には、どういうレース運びをすればいいのかなどもだんだんと分かって安定してきていました。何度か優勝できればタイトルは自然と手に入ると思うので、狙いにいきたいと思います。
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現在のところマネージャーはつけておらず、コンタクトを取ってくる様々なチームへの対応も自ら行っているという金丸。キャリアのほとんどをヨーロッパで積んでいるため、日本からのサポートも「今のところはないです」とのこと。ヨーロッパを拠点にまさしく“孤軍奮闘”する金丸が、世界を舞台に今後どのように飛翔していくのか、その活躍に注目したい。