2015年02月07日 09:41 弁護士ドットコム
ある晴れた土曜の昼下がり、東京都内のIT企業につとめる男性会社員のTさんは、JR中央線沿いにある大きな公園に、3歳の息子を連れて行った。土曜日ということもあって、家族連れでにぎわっていたそうだが、Tさんはふと驚きの光景を目にしてしまった。
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シートを敷いて横たわっていた若い男女のカップルが、舌を絡ませてキスをしていたのだ。徐々に行為はエスカレートし、男性が女性の服の上から胸を揉みしだいた。「服は着ていましたが、女性のスカートはめくれ上がり、パンツは丸見えでした」とTさんは振り返る。
子どもに見せたくない光景だったため、Tさんは子どもが近づかないよう気をつかった。「場所が場所だし、度が過ぎて不快でした」と憤っている。周りを不快にさせるほどイチャつくカップルは、罪に問われる可能性はないのだろうか。篠田恵里香弁護士に聞いた。
「カップルのイチャつき行為も、あまりにも度を過ぎれば、立派な犯罪になってしまうことがあります」
篠田弁護士はこう切り出した。どんな場合に罪に問われるのだろうか。
「たとえば、身体的な接触行為がエスカレートし、他の人から性器が見えたり、下着から透けて見えるようなレベルに至った場合、『公然わいせつ罪』に問われる可能性があります(刑法174条)。
ただし、公然わいせつ罪は、完全に性器が隠れている場合は原則として、成立しません」
今回のカップルは性器までは出していなかったようだ。ほかの罪にあたる可能性はないのだろうか。
「都道府県や一部の市町村で定められている迷惑防止条例では、多くの場合、『公共の場所・乗物における卑わいな言動(=性的な下品でみだらな行為)』を禁止しています。
今回は公園ですので、これにあたる可能性があります。
また、『公衆にけん悪の情をもよおさせるような仕方でしり、もも、その他身体の一部をみだりに露出した』と判断されれば、軽犯罪法違反となる可能性もあります(同法1条20号)。
ほかにも、地域によっては、公園条例で『風紀を乱したり利用者に迷惑をかける行為』を禁止し、これに違反した場合の罰則を設けている場合もあります」
これらの罪にあたらなくても、周囲が不快に感じた場合、「見たくないものを見せられた」と損害賠償を求めることはできるのか。
「日本では、残念ながら、なかなか認められないでしょうね。
このような行為をやめさせたい場合は、『法律違反の可能性がありますよ』と注意するか、場合によっては、公園の管理者や警察に連絡をすることも視野に入れてよいかもしれません」
篠田弁護士はこのようにアドバイスしていた。
度が過ぎた行為は、人を不快にさせたり、場合によっては罪に問われることもある。若気の至りとはいえ、場所と状況を考えよう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
篠田 恵里香(しのだ・えりか)弁護士
2008年に弁護士登録(東京弁護士会)。東京を拠点に活動。男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。多数のメディア番組に出演中。
事務所名:弁護士法人アディーレ法律事務所
事務所URL:http://www.adire.jp