アンダルシア名物、冬の強風が朝から吹き荒れた2月4日のヘレステスト最終日。マクラーレン・ホンダも今日こそは3日間の鬱憤を晴らすようにガンガン走りまくるはず──そんな期待を胸に、セッション開始10分前からピット前で待ちかまえた。
ところが午前9時になり、他チームの7台が次々にチェック走行を済ませたあともマクラーレンのガレージからはマシンが出て行く気配がない。9時18分、ようやくエンジンの暖機が始まり、ヘルメットを被ったジェンソン・バトンがコクピットに座るのが見えた。9時26分、待望のコースイン。しかし、ガレージを2メートルも離れないうちに止まってしまう。
ほどなく再び走り出し、合計3回の1周ランを繰り返す。昨日のフェルナンド・アロンソのように、すぐ5周程度の計測周回に移らなかったのは何かトラブルを抱えて、こまめなチェックが必要だったせいか。昼過ぎにはピットロードから1コーナーに合流する上り勾配で立ち往生。惰性で坂道を逆に下りながら、メカニックの到着を待つ場面もあった。
その後、5周、5周、8周と、ようやく小刻みな計測ランを行えるようになったのもつかの間、再びトラブルが発生する。最後はエンジンを止めた状態のまま惰性でピットまで戻ってきた。さらに燃料系、点火系に異常を示す警告が出たのでチームは大事を取って、これ以上走らないことを決断。通常のセッション終了予定より2時間早く、新生マクラーレン・ホンダ最初のウインターテストが終了した。
4日間の合計周回数は79周、距離にして約347km。通常のレース1回分+αほどになる。初日だけで157周、690kmと2レース以上を周回したメルセデスとは、とても比較にならない。それでも最終日に期待したような十分な走り込みができていれば、気持ち良くへレスを去ることができたはずだった。
朝のトラブルは、どうやらオイルを入れ過ぎたというヒューマンエラーだったらしい。午後も「データ設定ミスとか、燃料ポンプが一瞬動かなくなったり」という些細といえば些細なトラブルだったと新井康久 総責任者は説明してくれた。
とはいえ、いくら些細なトラブルでも予定していたテストメニューの消化を妨げたことは確かだ。
「とりあえずパワーユニット側のシステムチェックは、ほぼやり終えました。今回は、ほぼ作動確認のみです。何が最適解かという分析は次回のバルセロナテストから本格的にやることになるでしょう」
マクラーレン・ホンダ初テストは、果たして成功だったのか。トラブル続きで満足に走れなかったことを思えば、手放しで賞賛はできない。一方で「わずか4日間とは思えないほど膨大なことを学べました」と新井 総責任者は言っていた。さらにマクラーレンとホンダが共同で推し進めた「できるだけ短期間で頂点に返り咲くためのアグレッシブかつ独創的なマシンコンセプト」が決して間違っていないという自信を再確認できたともいう。
2週間後のバルセロナではパフォーマンス発揮に振ったテストも行われるはず。そこで初めてマクラーレン・ホンダの潜在能力が、ある程度は明らかになることだろう。
(柴田久仁夫)