テスト3日目、2月3日(火)の天候は曇り。パワーユニットのトラブルで、マクラーレン・ホンダはテスト2日目も棒に振ってしまった。終了間際に1周だけチェック走行をこなしたジェンソン・バトンは「明日は大丈夫なはずだよ」と、あくまで前向きなコメントだった。
しかし3日目の朝9時前、マクラーレンのガレージをピット前の仕切り壁から覗くと、新井康久 総責任者を始めとするホンダエンジニアたちが、かなり硬い表情でマシンを見守っているのが見えた。
午前9時01分。フェルナンド・アロンソがコースイン。いくらか回転数は低く感じるけれど、しごく真っ当なエキゾーストノートがコース上に響き渡る。走り出すとすぐに、いてもたってもいられないという感じでホンダのスタッフがピット前に出てきた。1周を走り終えたMP4-30が問題なく戻ってくる。
それを見届けた新井 総責任者は、傍らに佇む開発責任者の櫻原一雄エンジニアの肩をぽんぽんと二度、軽く叩いた。ほぉーっと息を吐く櫻原エンジニア。一方、仕切り壁の向こうにいても長身のせいでよく目立つエリック・ブーリエ レーシングディレクターは右手の親指を立て「どうだ」とばかりに僕に向かって高く上げて見せた。みんな「大丈夫」と言いながら、実際にちゃんと走るまでは相当心配だったのだろう。
その後は5周のショートスティントを2回、11時過ぎには10周のスティントを問題なくこなす。前日までのトラブル山積がウソのようだ。スティントによってラップタイムが1周ごとに1秒前後遅くなったり、逆に速くなったりするので「また問題発生か?」と部外者のこちらまで、すっかり神経過敏になってしまう。しかし、これは単にシステムチェックによるものに過ぎないようだ。
アロンソの自己ベストは、10周ランの1周目に出した1分35秒553。前夜の雨が乾ききらないハーフウエットの路面コンディションでは中盤に位置するタイムだった。
昼前には、さらに長いスティントを敢行。しかしアウトラップで冷却系の水圧異常の警告が点き、アロンソはすぐに戻って来た。当初は単なるセンサーの不具合も疑われたが、どうやら実際に水漏れだったようでパワーユニットを降ろして対処することに。現在のF1では、いったんパワーユニットをバラすと組み立て直すのに数時間はかかってしまう。残念ながらアロンソ担当の2日目は、32周でピリオドを打った。
とはいえ初日、バトンが走った2日目の5倍以上の周回数である。終了後の会見でブーリエは「懸案だった電子制御系のトラブルは解決できた。もう再発はしないはず」と高らかに宣言した。それはちょっと楽観過ぎる気もするが、とにかく最終日のバトンによるテストが、どれほど順調に推移するか。とりあえずは注視してみよう。
(柴田久仁夫)