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ジャーナリスト後藤健二さん、テレビ東京に膨大な「取材メモ」を送っていた

2015年02月04日 14:40  キャリコネニュース

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シリアでのISIL人質事件で犠牲になったとされる、ジャーナリストの後藤健二さん。彼はテレビ東京の関係者に、膨大な取材メモや番組の企画を送っていた。

2015年2月2日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、番組の予定を変更し「"後藤メモ"で検証...卑劣なイスラム国」と題して緊急生放送を行った。

「イスラム国」の出現を早くから予見

後藤さんからのメールは2012年8月から14年10月まで、およそ3年におよぶ。彼の取材に同行経験のあるテレビ東京報道局の福田裕昭解説委員は、「(後藤さんは)去年の今頃、一時期アルカイダ系の過激派組織から短い時間拘束された事もある」と明かした。2014年2月2日のメールには、その詳細が書かれている。

「アル・ヌスラに捕まりました。深く行こうとすれば何らかの拘束や障害に出くわすのは想像できますし、そうしたことはシリアが初めてではないので、ある程度対応は心得ていましたが。(中略)しかし、無事に先ほどトルコ側に脱出しました。デジカムと三脚は失うことになりましたが・・・」

さらに翌日には、現地を冷静に分析したこんな言葉を書き送っている。

「今後のシリアを占う上である意味ユニークで発見の多い時間でした。アサド政権が(万が一)倒れたら、もうこの地にイスラム国家の誕生は避けられないと確信しました」

この「イスラム国家」とは、何らかのイスラム系の過激派組織の拡大という意味で、世界が「イスラム国」を認識し始めた昨年の6月より前にそれを予見していたことになる。現場に入っていた後藤さんならではの洞察だ。

後藤さんは2012年から、シリアに何度も入り取材。福田氏は「2013年の初頭には、すでに反政府勢力の中に『イスラム国』の前身のような組織があったと、後藤さんは取材メモの中で指摘していた」と明かす。

ISIL台頭のきっかけは「アラブの春」

後藤さんが送ってきた企画書には、次のような言葉もあった。

「いつまでたってもまとまらないシリア反政府勢力のなかで、急速に勢力を拡大してきたのは、過激イスラム原理主義グループだった。(中略)彼らは、イスラムの名を借りたテロリストに他ならない」

後藤さんのメモに多く出てきた「ISIL/ISIS」は、イラクとシリアにまたがる武装集団勢力「イスラム国」を指す。イラクの旧フセイン政権の残党で少数派だったが、2010年から12年にかけてアラブ諸国で発生した大規模な反政府・民主化デモ「アラブの春」をきっかけとしたシリア内戦と共に、勢力を拡大したのだ。

2014年には、後藤さんはトルコ国境を越えて何度もシリアに入る。「窮乏する市民生活の変貌、一般市民の国際社会への失望と本音などを取材したい(2014年1月16日)」と空爆と戦車の砲撃の中、命がけで世界に発信しようとしていた。福田氏には「小さな子どもがいるので無理はしません」と言っていたが、去年10月の動画が最後のメッセージとなった。

「何が起こっても責任は私自身にあります。どうか日本のみなさんもシリアの人たちに何も責任を負わせないで下さい」

番組では、イラクやシリアから逃れた多くの避難民がテント生活を強いられている様子を映した。元警察官の男性は、「わずか16人の警官が3日間抵抗したが4日目に制圧された。町に二人の娘と息子、妻を残してきた。早く戻って戦いたい」と泣き崩れる。

ある女性は「金を要求されたので断ると、夫と12歳の息子が殺された。息子の肝臓がお腹から出ていた」と証言。ある医師は、「ISISはなくならない。無理無理無理。脅威はずっと続く。世界を征服しようとしている」と怯えた表情で話す。

本当の人質は「シリア・イラクの市民」という指摘も

同じころ、シリアでは後藤さんが拘束されていた。国際ジャーナリストの竹田圭吾氏は、後藤さんが伝えたかったのは「本当に人質になっているのはシリア・イラクの市民の人たち」ということだったと指摘した。

「もし人質事件が起きなかったら、後藤さんの取材を僕らはどれだけ真剣に見ただろう」

元外務省の専門分析員、金谷美沙氏(中東・過激派組織の分析を担当)はISILの残虐性を指摘し、「暴力と恐怖による支配は限界をみる。いずれ弱体化するのではと考えられます」と解説。日本の役割として「教育改革」をあげた。

「テロが起きる根の部分をいかに取り除くか。自由とはなんなのか、社会の問題とはなんなのか。しっかりした教育が必要」

ISILは「日本にとっての悪夢が始まる」とメッセージを発し、日本の人道支援すら敵と見なしている。しかし番組は「過度に警戒してはならず、政府の渡航情報はもとより、企業や個人も情報を把握していくことが必要」という論調だった。

それだけに、シリアやイラクの難民が絶望している惨状を報道する後藤さんのようなジャーナリストがいることが、いかに重要かを考えさせられた。(ライター:okei)

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