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マクラーレン・ホンダF1密着:テスト2日目も産みの苦しみ、不可解なエキゾーストノートでチェック走行が続く

2015年02月03日 13:20  AUTOSPORT web

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テスト2日目は開始早々にコースイン、そこから順調に走り込めると予想していたが……
2月2日(月)、ヘレステスト2日目はジェンソン・バトンがステアリングを握った。午前9時10分に最初のコースイン。さほど間を置かずに2周目のチェック走行。それだけを見れば、初日に出た様々なトラブルは昨夜のうちに対処を終え、順調に滑り出したように思える。エリック・ブーリエが初日の会見で「2日目は少なくとも60周はこなしたい」と語っていた目標も決して高望みではないように見えた。

 しかしMP4-30の発する音を聞けば、そんな楽観は吹き飛んでしまう。何と形容したらいいのか、野太いともちょっと違うし、バラついている感じでもない。いずれにしても「ボォーッ」という低周波の音を発しながら、ごくゆっくりとしか走れなかった。

 その後しばらくはジャッキアップされた状態で点検作業が続けられ、昼前に3度目のコースイン。計3周を走って、タイムも記録した。しかし1分54秒655と、この日もトップに立ったフェラーリのセバスチャン・ベッテルから実に30秒落ち。最後はピット入口で止まりかけ、メカニックたちが救出に駆け出す一幕もあった。何とか自力でピットには戻れたが、それ以降はライバルたちが周回をこなす一方で、マクラーレン・ホンダのマシンだけはガレージにとどまり続けた。

 午後4時。サーキットはにわか雨に見舞われ、路面はウエット状態に。これでテスト終了かと思われたが、バトンはレインタイヤで1周だけ走行した。全8台中7番手。最下位でなかったのは、レッドブルのダニール・クビアトがコースイン直後に1セットしかないフロントウイングを壊してしまい、フロントウイングなしで走り続けたからだ。

 2日目は、どんなトラブルが出たのだろう。初日に比べると関係者の口が一様に重い。それだけ深刻だということか、結局ホンダの新井康久 総責任者には話を訊くことができなかった。マクラーレンのエンジニアディレクター、マット・モリスに尋ねても「車体とパワーユニット両方のトラブルだね」「電子系? まあ、そうかな」と、あまり要領を得ない。

 不可解な排気音に関しては、ホンダのエンジニアたちが「V6気筒の左右のバンクのバランスが悪い」と話していたらしい。燃焼バランスということだろうか。頭の中に「?」を渦巻かせながら、ようやくマクラーレンの今井弘 首席エンジニアを捕まえることができた。

 具体的なトラブル原因については、今井エンジニアからも明確な答えを得られたわけではない。しかし、彼は「産みの苦しみというところです」と、あくまで前向きで「楽しいですよ」という言葉さえ飛び出した。まともに走れない、この状況を楽しんでいる?

「新しいことをやる場合、こんなものですからね」

 これ以上悪くなりようがないし、この状態から着実に進化していけばいい。今井エンジニアの言葉は、おそらくそういうことなのだろう。自然な彼の物腰からはMP4-30/RA615Hというパッケージへの信頼と、これまで多くの修羅場で培ったであろう大抵のことには動じない度胸が感じられて、こちらまで少し心強くなってしまった。ヘレスでのテストは、2月4日まで予定されている。

(柴田久仁夫)