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全国で横行する「違法残業」 ブラック企業に「是正勧告」するだけで十分なのか?

2015年02月03日 10:51  弁護士ドットコム

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厚生労働省は、昨年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」の結果を発表した。法令違反が疑われる全国の4561事業所に「立ち入り調査」を実施した結果、83.6%にあたる3811事業所で、労働法規に違反する実態があることが明らかになった。


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主な違反は、違法な時間外労働(2304事業所、50.5%)、賃金不払い残業(955事業所、20.9%)など。中には、労使協定の届出がないまま、月に約270時間もの時間外労働が行われていたケースもあった。



こうした違法行為の実態があるにもかかわらず、厚労省の対応は「是正・改善に向けた指導」にとどまっている。ブラック企業の法令違反をなくすためには、「罰則」など、もっと強力なペナルティを科すべきではないだろうか。長時間労働の問題に取り組む波多野進弁護士に聞いた。



●罰則が科されるケースは少ない


「労働基準法には、違反した場合の罰則がしっかり定められています。



たとえば、使用者が、時間外労働に見合う割増賃金を労働者に支払っていない場合、労働基準法37条違反にあたります。この違反については、30万円以下の罰金もしくは6か月以下の懲役という罰則が定められています(労基法119条)



悪質な労基法違反があり、それが繰り返されている場合には、労基法違反を理由とした罰則が科される可能性があります」



罰則はしっかりと定められているわけだ。だが、違反が繰り返されているようなケースでないと、罰則は適用できないのだろうか。



「そういうわけではないですが、実務においては、罰則が科される段階まで行くケースは少ないです。



一般的には、労働基準監督署の監督官が、使用者に労基法違反の事実を指摘して『是正勧告』などを行って、違法行為をやめるように『指導』するのが一般的です」



●悪質な使用者には厳しい対応を


対策として、それで十分だろうか。



「是正勧告をきっかけに労基法違反が是正され、職場環境が改善されるケースもあると思います。しかし、悪質な使用者の場合、労基法違反の手口が巧妙化・悪質化しています。



たとえば、サービス残業が問題になっている会社で、タイムカードを廃止するケースや、タイムカードがあっても、本当の時刻を打刻せずに、あたかもタイムカード上では残業がないかのようにするケースがありました。



労基署の指導が入った結果、かえって労働条件・労働環境が悪化するということもあります」



波多野弁護士はこのように指摘したうえで「悪質な使用者には、積極的に刑事罰まで科すことを視野に入れて、労働基準監督署は厳しく対応すべきと思います」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com