2015年2月2日、東京地方裁判所で「ワタミ過労死裁判」の第7回口頭弁論が行われた。今回で原告(遺族)側、被告(ワタミ)側ともに証拠や主張の提出をほぼ終えた。裁判は弁論準備を経て、証人尋問へと進む。
今回の口頭弁論で新たに明らかになったのは、過労死した森美菜さんが勤務していたワタミ久里浜店の「店長による供述」だ。美菜さんは同店長に対して、閉店後の週1回のカウンセリングで、業務の負荷が重いことを繰り返し伝えていたという。
遺族側「ワタミ側は過労認識していたはず」
労基署から提出された供述書には、次のような店長の言葉が記されていた。
「(美菜さんは、生活が)夜型になったことで生活のリズムがつかめない、休日も気持ちと体力のリセットができないため気分転換ができずにただ寝て終わってしまったこと等話していました」
「(美菜さんは)気持ちが真っ暗になって沈んでしまうこともあると、ちょこちょこ話していました。確かに、私(店長)から見ても心が沈んでいるのがはっきりわかる時もありました」
こうした美菜さんの状況を「被告(ワタミ側)らも当然認識していたはず」だと、遺族側は主張する。しかし、業務負担が軽くなる措置を取られることはなかった。
美菜さんは長いときには、昼14時から明け方6時までの長時間労働を行っていた。早朝や休日も、研修や創業祭の参加といった事実上の勤務を強いられている。
遺族側は前回までの口頭弁論で、過酷な労働実態やそれを強いる制度について主張をしてきた。これに対する被告ワタミ側の今回の主張は、次の2点に限られた。
(1)役員でない従業員の不法行為責任について「極めて限定的な場合に限るべき」であること
(2)給与体系について裁判例を挙げながら「過酷な労働」を強いるものでないこと
ワタミ側は、本質的な反論できず?
原告側が前回主張した、渡邉美樹氏ら役員の責任や、長時間労働や休日勤務といった労基署の是正勧告、指導票を受けた労働環境の実態などについての反論はなかった。遺族側の江口智子弁護士は「本質的な反論にはなっていないものだった」と説明する。
今後の裁判は「弁論準備手続」に入る。出揃った証拠や争点について整理され、その後は証人尋問などの証拠調べに進む。提訴から約1年が経過し、裁判後の報告集会で美菜さんの遺族はこう話した。
「労災が降りて3年、事件が起こって6月で7年になります。いよいよ今年中に、裁判は大詰めに向かうことと思われます。長い年月、皆様方には温かいご支援をいただきまして、心より御礼を申し上げます」(父・豪さん)
遺族側を支援する東京東部労組の須田光照書記長は、今後予定されている証人尋問について、
「当然、渡邉美樹氏に証人として『出てきてもらいたい』と主張していく」
「まずワタミがブラック企業批判に真正面から向き合うためには、遺族に向けて労働実態を解明し、正面から謝罪し、責任を取っていくこと。これなくしてワタミへの批判は解決しないし、労務改善はありえないと思います」
と述べた。裁判は次回から弁論準備に移り、期日は3月16日を予定している。
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