2015年02月02日 17:21 弁護士ドットコム
動画サイトYouTubeで人気を博すHIKAKINさん(25)が書類送検されたというツイートが、2月1日夜から翌日にかけてネットを騒がせた。HIKAKINさんはYouTubeに動画を投稿し、その動画から得られる広告収入で生計を立てる「YouTuber(ユーチューバー)」として有名だ。投稿動画の再生回数は累計で15億回を超えるという。
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ツイートの拡散を受け、HIKAKINさんはツイッターで、書類送検の事実を否定。「えええ(´・_・`)完全にデマですね。これもうイタズラの域を超えてるので、ちょっと調べます」「僕が書類送検されたとかデマを拡散されてしまい、すでに信じてしまっている方多数。本当に残念です。僕は何もしていませんし、普通に今日もイベント出演していましたので、宜しければ勘違いしてしまっている方々にデマだとお伝えくださいm(._.)m」などと表明した。
元となったツイートや発信源となったアカウントは、既に削除されているもようだが、ツイッターでこうしたデマを流せば、やはり名誉毀損罪などに当たるのだろうか。また、その内容をリツイートした人の責任はどうだろうか。ネットでの名誉毀損問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
「すでに消去されていますが、元のツイートには『【速報】HIKAKIN氏YouTube広告収入不正入手発覚で7時半頃 書類送検』と、書かれていたようです。
もしこの内容でつぶやいたとすれば、このツイートをした人は、HIKAKINさんの名誉を毀損したと見なされる可能性が高いでしょうね」
清水弁護士はこのように指摘した。どうして、そう言えるのだろうか。
「書類送検は、一言でいうと、警察が犯罪捜査の書類を、検察に送ることです。
そのようにツイートすれば、HIKAKINさんが不正を行った疑いで、警察の捜査を受け、検察に送致されたと、公然と指摘し、HIKAKINさんの名誉を傷つけることになります。
したがって、名誉毀損罪の構成要件を満たすでしょう」
ただ、誰かが書類送検されたというニュースは、日常的に報じられている。そういったニュースをツイートすることも問題なのだろうか?
「名誉毀損罪には、『公共の利害に関する場合の特例』があります。ざっくり言うと、その情報に公益性があり、それが『真実』なら、罪に問われないという話です。
しかし、いくら公共の利害に関する話題だとしても、ウソのツイートをすれば、罪に問われることになります」
今回のようなデマをツイートした人が、警察に捕まる可能性はあるのだろうか?
「実際に捜査がされるかどうかは今後の展開しだいですが、警察の捜査対象となる可能性はあるでしょう」
デマのツイートをリツイートした人は、どうだろうか?
「リツイートをしただけでも、刑事上の責任を問われる可能性はありますが、実際に処罰対象となるかどうかは、何とも言えません」
ツイートを広めた人の中には、デマツイートが真実だと信じていたケースもあるだろう。
「そうですね。ツイートの内容が結果的にウソだと判明した場合でも、『真実と信じるのに相当な理由があったと考えられる場合』であれば、名誉毀損罪には問われません。
ただし、相当な理由があったと認められるためには、しっかりした資料や裏付け調査などに基づく根拠が必要です。
根拠が全く示されていないネット上のツイートを『真実だと思った』と言っても、通用しません」
清水弁護士はこのように指摘していた。
他人の名誉を毀損するようなデマツイートをしたり、それをリツイートすれば、刑事上の責任だけでなく、本人から訴えられて、民事上の損害賠償責任を負う可能性も出てくるようだ。ネット上でそうした発言をしないのはもちろん、真偽不明の情報には十分注意すべきだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
IT法務、特にインターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定に注力しており、平成24年には東京弁護士会の弁護士向け研修講座の講師を担当し、26年にも同様に講師を担当している。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp