高いキャリアを目指す女性にとって、「出産」は重要なターニングポイントになります。企業や組織で専門性の高い仕事で重要な役割を果たすことを優先し、出産のみならず結婚すら断念する人がいるのも事実です。
この問題は、日本に限ったことではありません。米シンクタンクのピューリサーチセンターは2014年11月、18歳以上の米国男女を対象に「仕事でキャリアを築きたい女性は、いつ子どもを作るべきか」というアンケートを行いました。(文:沢水 蛍)
米国の調査では「キャリアを築いた後」が40%だが
調査結果によると、回答者の40%が「出産は自分のキャリアをある程度築いてからの方がいい」と答え、36%が「キャリアを築く前の若いうちに子どもを作っておいた方がいい」と答えたそうです。キャリアを築く後を勧める人が多いもののあまり大きな差はなく、意見が分かれているとも言えます。
残りの22%の人は、仕事でキャリアを積みたい女性なら「子どもを持つべきではない」と考えているようです。男女別で見ると「キャリアを築いた後」と考えるのは男性が38%、女性が41%と若干の差があります。
なお、この調査では「キャリアを築く」とは、「組織の最高幹部に到達する(reach a top executive position)」という意味で使われています。
現状でも最初の子どもを産んだ年齢は、学歴で差があります。現在40~50歳で修士以上の学歴を持つ女性では、中央値が30歳。30歳以上が54%を占めました。大卒では中央値が28歳、短大卒では25歳。高卒以下では24歳で、30歳未満が84%を占めています。
仕事でハイキャリアを目指す人は高学歴を志向するので、20代を勉強や研究に費やすことで出産が30代にずれ込むのでしょう。一方で、10代で社会に出た人が20代のうちに結婚し出産するのも自然といえます。
ユニ・チャームは妊娠した内定者の入社を30歳まで待つ
身体的・生理的制約を考えれば、20代の若いうちの方が妊娠・出産に適しているのは否定できません。経済評論家の勝間和代さんのように、大学在学中の21歳で最初の出産をし、3児の母親としてキャリアを重ねる女性もいます。
とはいえ勝間さんのような精力的な例はまれですし、企業や組織も出産・育児を終えてキャリアに空白時期がある人を、高度な職種で中途採用するケースは少ないのが現状です。
そんな中、衛生用品のユニ・チャームは、就職活動中に妊娠が分かった出産予定の採用内定者に対し、30歳まで入社資格を継続する制度があるそうです。子どもをいつ産むかの判断は人それぞれですが、「キャリアを築く前に出産をしたい」と希望する女性の選択肢が増えるといいですね。
(参照)For most highly educated women, motherhood doesn’t start until the 30s (Pew Research Center)
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