1月31日、土曜の朝。昼前にセビリア空港に到着。真冬とは思えない南欧アンダルシアの陽光を浴びながら、1時間もレンタカーを走らせると、ほどなくへレスサーキットの看板が見えてきた。すでにパドックには各チームのトランスポーター、ホスピタリティトラックがずらりと並んでいる。
マルシャとケータハムが消滅の危機にあり、彼らを除くと計8チーム。フォース・インディアは新車投入を次回のバルセロナテストから、ヘレスは走らないと決めたため、7チームのマシンが集うことになる。
テスト前日の昼下がりは、拍子抜けするほど、のんびりした雰囲気だった。何かネタはないかと歩き回る報道陣を除けば、パドックにはほとんど人通りがない。時おりチームスタッフがコーヒーを片手にガレージへ向かう姿に出くわす程度だ。
しかし実際には、締め切られたガレージ内部やトランポ内のエンジニアルームには初テスト前の張りつめた雰囲気が漂っている。特に今回が本格走行となるマクラーレン・ホンダは、そうに違いない。ちょうど1年前のへレスでは、特に初日はフェラーリもルノーも、あのメルセデスさえも一様に初期トラブルに苦しんだ。1年遅れで参戦するホンダにしてみれば、その二の舞は何としてでも避け、1日も早く1シーズン分のギャップを縮めたいという思いは、ことさら強いことだろう。
マクラーレンのガレージ前でスタッフの行き来を観察していて、面白いことに気がついた。ホンダのエンジニアたちがマクラーレンとまったく同じウェアを着ているのだ。1980~90年代の第二期、そして2000年代初期の第三期BARホンダ時代は、ホンダのエンジニアたちはチームとは違うウェアを着用していた。今季からはホンダ色をことさらに強調せず、チームとの一体化に務めるということだろうか。
これまでのホンダF1と違う点が、もうひとつ。イギリス駐在スタッフの任期である。第三期以前は短い場合は半年ほどで、どんどん人を入れ替えていた。できるだけ多くの若い人材に、レース現場の修羅場を経験させようという意図からだった。それが今回は数年単位の任期になるという。
とはいえ、これまでのような人材育成を軽視するというわけではない。ホンダの広報担当者も「これまで同様、若手中心の人選です」と言う。一方で任期を延ばしたのは、やはりマクラーレンと一緒にやって行く上で、継続性を考えてのことだ。
F1に限らず、同じ顔ぶれで長く働いたほうが、物事はスムーズに動きやすい。日英混合部隊の場合は特にそうだろう。やはり、ここでも「一体化」がキーワードということか。
(柴田久仁夫)