2015年02月01日 11:41 弁護士ドットコム
児童虐待を防ぐために、児童相談所と警察、医療機関などが「連携」することの重要性を議論する「子ども虐待防止シンポジウム」が1月24、25日、横浜市で開かれた。児童相談所の職員や医師、弁護士、検事らが登壇し、児童相談所と警察が連携する意義や、連携強化に向けた課題を議論した。
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主催したのは、子ども虐待ネグレクト防止ネットワークと、かながわ子ども虐待ネグレクト専門家協会。いずれも、児童虐待の防止に取り組むNPO法人だ。
児童虐待防止のために複数の機関が連携するうえで、特に問題視されているのが、児童相談所と警察の連携不足だ。23年間の警察庁勤務経験がある後藤啓二弁護士は24日、「児童相談所と警察が連携しない理由と連携するための方策」と題して、両者の連携について講演した。
後藤弁護士は「警察と児童相談所は、お互いに縦割りの組織で、『連携なんて聞いたこともない』『自分たちのやり方を変えたくない』という意識が強くあります。お互いがよほど困らない限りは連携しようとしません」と指摘した。
そのうえで、両者が連携するための条件を次のように話した。
「警察は基本的に、家出している子どもを保護したら、すぐ家に帰します。ただ、児童相談所と情報共有ができていて、その子どもが家で虐待を受けていると分かれば、すぐ帰したりせず、児童相談所に連絡して対応してもらえます」
さらに、虐待を防ぐために、連携して「家庭訪問」をおこなうことの有効性を指摘する。
「家庭訪問は主に、児童相談所の職員の仕事でした。しかし職員は1人で100件以上のケースを抱えており、現状、家庭訪問がほとんどできていません。警察や市町村と情報を共有して家庭訪問すれば、虐待を防げるだけではなく、職員の業務軽減にもつながります」
後藤弁護士の講演を受けて、翌25日には「本音で語ろう『なぜ、連携しないの?』」と題したパネルディスカッションが行われた。
横浜市の児童相談所で児童精神科医として働く田崎みどりさんは、警察と連携して家庭訪問をすることへの課題を指摘した。
「家庭訪問は、虐待予防のために大切だと言われています。ただ、児童相談所が訪問するだけで嫌がる家庭もある中、もし警察が訪問したら、親は『監視されている』と感じ、より強いストレスを感じるかもしれません。警察が家庭訪問をするにあたっては、トレーニングが必要です」
ただ、それぞれのケースで、家庭の状況が「どれだけ危険なのか」という判断は、児童相談所だけでは不十分なこともある。そのため、田崎さんは、警察との情報共有が重要だと主張した。
「日ごろ、児童相談所の持っている情報をなぜ出さないのか。逆に、警察が持っている情報をなぜ出してもらえないのかと思うことがあります。子どもの安全を第一に考えるなら、その虐待のケースがどれほど危険なのか、リスクを把握すべきです」
パネルディスカッションで座長をつとめた小児科医の山田不二子さん(NPO法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク理事長)は、「子どもの虐待に関して、日本は先進国の中でも圧倒的に対策が遅れています。子どもを第一に考えれば、自然と多機関連携ができるのではないでしょうか」と語った。
(弁護士ドットコムニュース)