2015年01月31日 13:41 弁護士ドットコム
「アパートの上の階に住む子どもの足音がうるさくて病気になった」。そんな悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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相談者は、子どもが朝5時頃からバタバタ走り回るため、安眠を妨害された。そこで、上階の住人に何度か苦情を伝えたが、「子どものすることだから仕方ない」と開き直られたという。
しかし相談者は納得できない。そのストレスによって、帯状疱疹にかかり、仕事を何日も休むはめになったとして、上階の住人に「謝罪」と「病院代」を求めたいのだという。
一般論として、集合住宅での「騒音」が原因で病気になった場合、騒音元に対して病院代を請求したり、強制的に謝らせたりすることはできるのだろうか。また、その際、何か証拠などを用意しておくべきなのだろうか。不動産をめぐるトラブルにくわしい関戸淳平弁護士に聞いた。
「人が生活をしていく上で、騒音の発生は避けられません。他人にとって『不快な音』をすべて違法とすると、社会生活が不可能となってしまいます。
そのため、裁判では、次のような考え方がとられています。
社会生活上やむを得ないといえる騒音は、お互いに受忍(我慢)すべきである。ただし、騒音が我慢の限界(受忍限度)を超えた場合には、違法となる。
こういう考え方は『受忍限度論』と呼ばれています」
関戸弁護士はこのように説明する。受任限度を超えたかどうかは、どう判断されるのだろうか。
「騒音が受忍限度を超えるかどうかは、一般人を基準に、音の内容・程度やその場所の状況などから個別に判断されます。
ただ、小さな子どもが家の中で走り回ることは、しつけにも限界があるので、社会生活上、やむを得ないといえます。
したがって、子どもが走り回って発生する騒音は、違法と判断されにくいでしょう。
もちろん、無用なトラブルが生じないようにするには、マナーとして、お互いに早朝や深夜の生活騒音をなるべく出さないように気をつけるべきでしょう」
謝罪や治療費の支払いを求めることも、難しいのだろうか。
「もし騒音が違法といえる場合には、加害者に対して損害賠償請求をすることができますし、違法行為をやめるよう請求できます。
しかし、『謝罪の強制』は、名誉毀損事件などの特殊な場合を除いて、認められていません。今回のケースでも難しいでしょう」
請求する際、どんな証拠を用意しておくべきだろうか。
「もし裁判を起こして病院代などを請求するなら、騒音の違法性と損害の発生、および、両者の因果関係を立証しなければなりません。
騒音発生時の録音・録画や、音量を測定した記録などの証拠が必要です。
また、騒音が原因で病気になったという因果関係も、立証する必要があります。そのためには、病院の診断書などが必要です」
関戸弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
関戸 淳平(せきど・じゅんぺい)弁護士
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。
事務所名:横浜ユーリス法律事務所
事務所URL:http://www.jurislaw.jp/