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性行為の動画を見せて「交際継続」迫る――これは「脅迫罪」それとも「強要罪」?

2015年01月30日 11:51  弁護士ドットコム

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「画像持っている限り関係を続けようね」。警視庁は1月中旬、交際相手に「性行為の動画」を見せて、交際の継続を迫ったとして、目黒年金事務所副所長の男性(58)を強要未遂の容疑で逮捕したと発表した。


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報道によると、男性は昨年10月、交際相手の40代女性から別れ話を切り出された際、携帯電話で撮影した2人の性行為の動画を見せ、交際を続けさせようとした。同11月にも「過去がリークされたら困るよね」とメールで脅し、交際を継続させようとした疑いがもたれている。男性は「動画は見せていない」と容疑を一部否認している。



「脅した」というのなら、脅迫罪で逮捕されたのかと思えば、逮捕容疑は「強要未遂」だ。「脅迫罪」と「強要罪」はどこが違うのだろうか。刑事事件にくわしい中西祐一弁護士に聞いた。



●強要罪「怖がらせる+無理矢理何かをさせる」


「『脅迫』とは、簡単に言えば、他人に対して、身体や名誉、財産に害を加える旨を告知することです。2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(刑法222条1項)。



一方、『強要』とは、脅迫や暴行によって、他人に義務のないことをさせたり、権利の行使を妨げたりすることをいいます。こちらは、3年以下の懲役に処せられます(刑法223条1項)」



強要罪のほうが罪が重いわけだ。両者の違いはどこにあるのだろう。



「ポイントは、『脅迫』がただ単に脅すだけであるのに対して、『強要』は脅迫を手段として他人を怖がらせ、『本来ならする必要のないこと』を無理矢理させるという点です。



単に『怖がらせる』ことと、『怖がらせる+無理矢理何かをさせる』ことでは、後者のほうが悪質なため、より刑が重くなっています」



●「義務のない行為」を行わせようとした


「報道によれば、今回逮捕された男性の言動は『交際を続けてくれないと性行為動画を第三者に見せる』という趣旨です。これは、被害女性の『名誉』に対して害を加える旨を告知したことになります。



さらに、その脅迫を手段として、『交際の継続』という『義務のない行為』を行わせようとしているため、『強要』に該当します」



ただ、今回は強要「未遂」で逮捕されているようだが・・・



「被害女性が警察に相談した結果、『交際を継続する』という逮捕された男性の目的が達成されなかったからだと思います」



中西弁護士はこのように分析していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net