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許可なく「牛」を解体したら逮捕された! ニワトリを自宅でさばくのもダメ?

2015年01月29日 18:11  弁護士ドットコム

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許可された食肉解体場以外で牛を解体したとして、大阪府警と沖縄県警は1月中旬までに、男女5人を「屠畜(とちく)場法」違反の容疑で逮捕した。


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時事通信の報道によると、5人は昨年8月、沖縄県石垣市の畜産会社で、食べるために牛1頭をハンマーで殴り殺し、解体した疑いがもたれている。このニュースについて、ネットでは「そんな法律あるなんて知らなかった」「牛を無許可でさばいたらだめなのか」と、疑問と驚きの声が上がった。



牛の解体場所は、どうして制約があるのだろうか。他の動物の場合も、解体場所は決まっているのだろうか。「屠畜場法」という聞きなれない法律について、野田隼人弁護士に聞いた。



●食肉の安全のために規定された


「『屠畜』とは、家畜などの動物を殺すことです。『屠殺(とさつ)』とも言います。



『屠畜場法』は、簡単に言えば、食肉の安全を確保するための法律です。食用となる動物が適切に処理されることを目的として、制定されています」



野田弁護士はこのように述べる。屠畜場以外での解体を禁止することが、なぜ、食肉の安全につながるのだろうか。



「屠畜場では、獣医師の資格をもつ『屠畜検査員』が、動物を1頭ずつ事前に検査し、病気などの理由で食用にふさわしくない動物を排除しています。また、屠殺・解体の過程でも検査をして、危険な食肉を除外しています。



屠畜場以外の場所で屠殺・解体を行うと、こうした安全のための仕組みが働きません。危険な食肉が人の口に入る危険があります。



そのため、屠畜場法では、屠畜場以外の場所で、食用目的で屠殺・解体することを、原則として禁止しているのです」



●ニワトリやあひるには別の法律が存在


どんな動物でも、勝手に解体したら罰せられるのだろうか。



「いえ、対象となっているのは、牛、馬、豚、ヒツジ、ヤギの5種類です。



たとえば、猪や鹿、クマなど、狩猟の対象となる動物は、屠畜場での解体が困難として、対象としていません。



また、ニワトリやあひるなどの家禽(きん)類については、『食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律』という別の法律で、検査や指定場所での処理が定められています。



ただし、屠畜場法と違って、規制されるのは、不特定または多数へ提供する場合に限られています。つまり、家庭で家族にふるまうためにニワトリを解体する行為などは、規制の対象にはなっていません。



歴史的に自家飼育・自家消費が広く行われてきたことに配慮したわけです」



野田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
野田 隼人(のだ・はやと)弁護士
滋賀弁護士会所属。IT企業経営者兼弁護士。日弁連・刑事法制委員会委員、同・独占禁止法改正問題WG委員、同・中小企業の海外展開業務の法的支援に関するWG委員。京都産業大学法科大学院非常勤講師。
事務所名:弁護士法人コンパス 高島法律事務所
事務所URL:http://www.locolo.jp/