派遣先から「正社員」への採用を打診されても、受け入れるのは4割――。日本人材派遣協会が1月27日に発表した調査結果で、派遣で働く人の実態が浮かび上がった。
調査は過去半年間に派遣で働いていた4593人を対象に、インターネット上で実施。88%が女性で、平均年齢は38.1歳。80%が過去に正社員を経験している。派遣といえば「かわいそう」というイメージを抱く人も多いが、果たして本当にそうなのか。
残業時間「ゼロ」が半数以上。ほぼ定時退社が8割
回答者の平均時給は1365円。従業員数1000人以上の大企業で働く人は1420円で、1日8時間・月20日間勤務で22万7200円となる。業種別ではIT・通信系が1637円と最も高く、次がクリエイティブ系で1498円。最も低かった製造・軽作業系は997円だった。
賃金の満足度では「不満」(44%)が「満足」(38%)を上回っているが、それほど大きな差はなく、過去3年間の派遣就業中に「賃金が上がった」という人も35%いた。
1週間の平均残業時間は、半数以上の53%が「なし」と回答。1時間程度(17%)と2~3時間程度(12%)を加えると、毎日ほぼ定時で帰れる人が8割を超えている。週20時間以上という人は5%だった。
当面希望する働き方として「派遣」と回答した人は67%と最も多く、「正社員」は19%だった。ただ、数年後に希望する働き方では「正社員」が48%と多く、「派遣」のままは15%。
正社員を希望する理由は「雇用が安定するから」(84.3%)が最も多く、次いで「賞与があるから」(61.9%)、「福利厚生が充実しているから」(45.5%)という回答が多かった。
正社員の打診「断る」21%、「分からない」37%
とはいえ、正社員であっても賞与や福利厚生がなかったり、かなり乏しかったりする会社もある。必ずしも雇用が安定していない場合もあり、サービス残業がないことを考えれば「派遣の方がマシ」と考える人もいるかもしれない。
この点は派遣社員も心得ており、現在の職場(派遣先)から正社員雇用を打診された場合、「受け入れる」と回答した人は42%いたものの、37%が「分からない」、21%は「断る」としている。打診を断る理由(複数回答)は、
「体力的・精神的な負担が多くなるから」(34%)
「仕事の責任が重くなるから」(26%)
「残業がある、または多いから」(24%)
など、過重労働に巻き込まれたくないという回答が上位に来た。派遣で働く人の半数以上は残業のない働き方をしており、正社員になった途端に「会社最優先」を求められることを警戒しているのかもしれない。
正社員では家事や育児、介護や趣味などとの両立が難しい、と考えている人もいるだろう。「職場の人間関係が煩わしいから」(31%)という回答も多い。正社員になると飲み会への参加など、仕事以外での交流が求められる場合もある。人付き合いの苦手な人にとっては、正社員は面倒なのかも知れない。
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