トップへ

【F1新車解説】2つに分かれたノーズ規定の解釈

2015年01月27日 20:20  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

ロータスE23のノーズ
2015年のF1マシンが徐々に姿を現し始めた。今季のクルマの注目点であるノーズも、複数の解釈と形状が出てきている。

 ウイリアムズは2015年型のFW37を、フォース・インディアは旧型車にノーズを換えた2015年仕様のカラーリングをそれぞれ公開した。いずれの2台とも、ノーズ先端に昨年の小型版とも言うべき小さな突起を採用していた。これは基本的に、昨年までの細長い棒状のノーズの考え方をもとに、今年の規定に対応したものだと考えられる。

 今年の規定では、ノーズ先端から5センチ後方に、最大幅14センチで90平方センチの断面積を設けなければならない。これをもとに計算すると、その断面部分は最少でも約6.5センチの厚さになる。ウイリアムズもフォース・インディアも、この規定を文字どおり満たし、ノーズ先端に細く短い突起を設けている。

 2015年規定では、さらに第2の断面部分を設けており、これはノーズ先端より15センチ後方の位置で、最大幅は33センチまで、最少断面積は200平方センチとされている。ここがウイリアムズで見られる、突起後方のノーズ先端付近になる。

 このふたつの断面積の規定は、衝突安全対策のために設けられたものだ。外形については規定されていないが、2番目(後側/15センチ後方)の断面規定部分から後方は徐々に広がるテーパー形状にしなければならないとされている。つまり、ノーズ先端は1本のきれいな直線や曲線形状でなくて良いと解釈できる。

 そこでこの2チームは、規定をクリアすることを目的に突起を製作。ノーズ下に流れるエアフローを少しでも多くするために、突起の両サイドを空けるデザインを採用した。ノーズ先端が下がれば下がるほど、昨年まで得られたノーズ下でのダウンフォースは失われていく。それを最大限に回復しようという狙いだ。

 一方、ロータスE23は、ウイリアムズやフォース・インディアとアプローチが異なっている。E23はノーズ先端の突起がなく、やや細く平たい先端からテーパー型で広がるノーズを採用。これは、FIAが2015年規定で目指した理想像をほぼ体現しており、昨年2本ノーズで最も規定に挑戦してきたロータスが、開発姿勢や考え方で大きな方向転換を図ったといえる。

 もちろん、ロータスも今季の安全基準を満たしているだろうが、クラッシャブルストラクチャー(衝突構造体)の突起や段差を、カバーを着けけることで見た目を変えている。このロータスの手法は、当然、ウイリアムズやフォース・インディアの突起型に比べ、ノーズ下に流れるエアフローが減ることが想像される。それでもE23は、ノーズ下面の形状を工夫して少しでもダウンフォースを得られるようにしているほか、そのノーズ下面以上に、ノーズ上面に流れるエアフローによってダウンフォースを獲得するデザインを狙ったと考えられる。なにより、E23はこのカバー構造を着けることで、性能はさておき、美的には優れたものになっている。

 どうやら、今年のF1マシンのノーズは、今シーズンのデザインの意に沿った低くて突起のないロータス型か、突起を設けてビジュアルよりもあくまで性能と機能を追求してノーズ先端を高くしたウイリアムズ型のいずれかになりそうだ。このあと発表される多くのトップチームがどちらの形を採用しているのか、あるいはさらに別の方法があるのか、 今後の新車発表が楽しみなところだ。

 どちらにしても、今後の合同テストやシーズン序盤戦でどちらがより良いのかが見えてくるはず。その結果次第では、シーズン中盤以降にノーズの形状を大きく変えてくるチームも出てくるかもしれない。ただし、ノーズの形を変えることは、そこから後方の車体全体への気流が変わることにもなるので、ノーズの変更はディフューザーからリヤウイングまで車体各部の変更に及ぶことになる。