人材紹介会社クライス・アンド・カンパニー代表の丸山貴宏氏が、ダイヤモンド・オンラインに書いた記事が話題になっている。大企業出身者が、転職市場で「敬遠」されているというのだ。
一昔前は転職市場に出てくれば「大いに人気を集める」大企業の社員だったが、最近では状況が「まったく変わっています」という。丸山氏は中小企業の経営者に、ある有名大企業に勤める30代後半の転職希望者を紹介した。しかし経営者からは「大丈夫、この人?」と、色よい返事はもらえなかったそうだ。
「世間知らず」が中小企業の経営者に嫌われる
それはなぜか。大企業出身者の多くは初めて転職すると「頭打ち」になるからだ。大企業では、人材、看板、資本といった「有形無形のリソース」があることが当たり前。しかし、中小企業にはそれが少ない。
「新卒からずっと大企業一社に勤めてきた人は『世間知らず』だと言えます。優秀な人たちを集め、隔離された居心地のよい世界で仕事をしているのが大企業で、世の中の現実や厳しさを体験していない」
こうした中小企業経営者の「失敗体験」が広がって、大企業出身者を敬遠する傾向が生まれたという。経営者に余裕がなくなり、「投資した人件費を早々に回収したいという気持ちが強いのでしょう」と、丸山氏は傾向が変わってきた理由を挙げている。
確かに中小企業では、仕事を1人で完結させる力が求められることが多い。しかし大企業の社員は、こうした経験もスキルも乏しい傾向にある。ツイッターやNewspicksなどでは「わかる~w」「私もまったく同感です」と共感する声も多い。
「大企業の社畜はホント使い物にならない。大企業とは既得の利権を回すだけで大金が入ってくるので下請け叩きと社内抗争しかしていない」
「ベンチャーから大企業に行った身からすると、本当に大企業の人は世間知らずだと感じる。言い方は悪いが、自分たちが世界の中心、という感じ」
「いかに己を俯瞰で見られるか」が勝負との声も
大企業にいれば顧客は自分「個人」ではなく、会社の「看板」と話したいがために仕事がスムーズにいく傾向にある。それを自分個人の価値と勘違いすると、あっという間に「世間知らず」になってしまう。
「ファンド業界でもピントのずれた銀行や商社からの出向者がいるんだよねー。会社の看板を自分の力と勘違いしてて(笑)」
コメントの中には、同じ会社に長くいすぎることで「得られるスキルは限られてくる」「転職してからUnlearn(癖を捨て去ること)に時間がかかる」ために、「世間知らず」になってしまうのではという人もいる。
確かに大企業は、居心地も条件も良い傾向にあるため、必要以上に長く在籍してしまうのかもしれない。
ただし大企業出身者の全てが「世間知らず」で使えないのかといえば、そうとも言い切れないようだ。「大企業でなきゃできないような大きな仕事もある」という意見もあるし、採用担当者からは「大企業の方はよく教育されている」という声もある。
結局は「いかに己を俯瞰で見られるか」「ビジネスマンとして何で差別化するか」であり、個人によるという人も多い。
「大企業の世界しか知らない」人事担当者がネック?
キャリコネニュースが都内の転職コンサルタントに話を聞くと、大企業経験者が、特に中小企業やベンチャー経営者から敬遠され始めているのは本当だという。
「社内調整業務が多く、主体的にビジネスを作り出すことに慣れていない人が多いため、経営者たちは『自社にフィットしない』と思い始めているようです」
一方で、「大企業への転職」に関しては、依然として大企業出身者のほうが強いのだという。大企業の人事部からは「大企業経験者」とリクエストされることも多く、ベンチャー企業出身者を紹介しても「有名企業での経験がないから…」と弾かれることもあると話す。
「似たような規模の組織での経験が、自社に貢献すると考える人事担当者は多いようです。要は適材適所ということなのかもしれませんが…」
ただ、このコンサルタントによると、大企業の世界しか知らない人事担当者ほど、上記のような傾向が強くなるという。大企業にベンチャースピリットを導入するためには、人事担当者から変えていくべきなのかもしれない。
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