2015年01月25日 15:01 弁護士ドットコム
「自分が出席した結婚式の集合写真がフェイスブックに流れている」。東京都内のIT企業につとめるMさんは、自分のうつった集合写真が友人の手によって、投稿されたことに気付いた。さらに「タグ付け」までされていたため、自分の友人・知人にその写真を見られることになった。
【関連記事:18歳男子と16歳女子 「高校生カップル」の性交渉は「条例違反」になる?】
Mさんは、自分のプライベートを勝手にさらされたような気分になり、「ひとこと断りをいれてほしかった」と憤った。ただ、お祝いの席のことなので、友人には強く抗議できなかったそうだ。
「いつ」「どこで」「誰と」「何をしていたか」という情報は、プライバシーにかかわる情報だ。結婚式で撮った誰かの写真を無断でSNSに掲載することは、法的に問題ないのだろうか。伊藤雅浩弁護士に聞いた。
「端的にいえば、プライバシー権とは『私生活上の情報をみだりに公開されない権利』のことです」
伊藤弁護士はこう切り出した。多くの人は、私生活上の情報を勝手に公開された場合、「プライバシーを侵害された」と思うだろう。法律に違反しているといえないだろうか。
「プライバシー権を侵害すると、民法上の不法行為になるので、損害賠償請求を受ける可能性があります。
一方、プライバシー権の侵害があったかどうかについて、裁判例では『一般人の感受性を基準にして、当該人物の立場に立った場合に、公表してほしくないかどうか』で判断するとされています。
つまり、その人がたまたま『嫌だ』と感じたからといって、ただちに違法になるわけではないのです」
しかし、「いつ、どこで、誰と、何をしていたか」という情報を公開してほしくない人は多いだろう。そのような情報は保護されないのだろうか。
「たしかに、そのような情報の中でも、プライバシーとして保護される情報は多数あります。
また、もちろん結婚式の場合でも、新郎や新婦ほかとの交友関係を知られたくなかったという人もいるかもしれません。
しかし、『知人の結婚式に出席した』という情報が、一般人の感受性を基準にして公表してほしくないかというと、現時点ではそこまでは言えないように、私は思います」
伊藤弁護士はこのように解説したうえで、次のようなエピソードを紹介していた。
「私が最近出席した結婚式では、SNSへの投稿に関して、最初に新郎と新婦からの要望・ルールが伝えられました。フェイスブックの利用者でも『タグ付け』の事前確認機能をオンにすることで、一定の制限がかけられます。
主催者も利用者も協力しながら、気持ちよく利用できる環境づくりをしていきたいですね」
お互いを気遣うことが大切だといえそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
伊藤 雅浩(いとう・まさひろ)弁護士
工学修士(情報工学専攻)。アクセンチュア等のコンサルティング会社に約8年間勤務した後、2008年弁護士登録。システム開発、ネットサービス等のIT関連法務を主に取り扱っている。経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」研究会メンバー。
事務所名:弁護士法人内田・鮫島法律事務所
事務所URL:http://www.uslf.jp/