2015年01月23日 17:51 弁護士ドットコム
道路標識へシールを貼ることは「アート」なのか、それとも「犯罪」なのか? 京都・大阪の繁華街で昨年12月末ごろから、落書きされた道路標識が次々と見つかり、物議をかもした。進入禁止の標識の真ん中にある「-」部分をかじるようなキャラクターのシールが貼られるなど、被害数は百近くになるという。
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1月14日になって、大阪市内の道路標識にシールを貼り付けたとして、40代の女性が逮捕された。報道によると、女性は1月3日、大阪市内で市道に設置された一方通行の標識にシールを貼った疑いがもたれている。女性は「芸術目的でやったが、今となっては大変なことをしてしまった」と話しているという。
女性は道路交通法違反の容疑で逮捕されたようだが、道路標識にシールを貼ることは、具体的にはどんな罪にあたるのだろうか。「芸術目的」だと、罪が軽くなったりするのだろうか。道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。
「道路交通法115条では、みだりに道路標識を『損壊』して、交通の危険を生じさせた者に、罰則を科すことが規定されています」
池田弁護士はこのように述べる。壊したわけではなく、シールを貼っただけでも「損壊」にあたるのだろうか。
「ここでいう『損壊』というのは、物理的に破壊したことだけでなく、標識の『効用を損ねた』場合も含むと考えられています。『効用を損ねる』というのは、簡単に言うと、その物が持つ本来の役割を果たせなくしてしまうようなことを意味します。
今回のケースでは、報道を見る限り、貼られたシールは、ある程度の期間ははがれない程度のもののように見えます。また、図柄の意味をなす主要部分を変更しているようですので、道路標識の持つ本来の役割を果たせなくしていると考えられます」
たしかに、もとの図柄から、かなり変わっているように見える。では、「交通の危険を生じさせた」とはいえるのだろうか。
「道路標識は、運転手が走行中に一瞬で意味が分かるような、簡単な図案になっています。
それにもかかわらず、今回のように、その一部をシールで隠して図案を変更してしまうと、運転手が、標識の意味内容をとっさに判断できない危険性も考えられます。
逆に『本物の道路標識ではない』と誤認する可能性もあり、危険な行為ともいえるでしょう」
「女性は『芸術目的だった』と主張しているようですが、芸術であれば正当というわけではありません。
法的に言えば、『表現の自由』ということになるでしょうが、公共の福祉に反するような表現方法は、認められません。今回は、表現の自由の範囲を逸脱してしまったのではないかと思われます」
池田弁護士はこのように指摘していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
池田 毅(いけだ・たけし)弁護士
現在、(公財)日弁連交通事故相談センタ-本部嘱託や、裁判所の公職などを務める。得意案件は交通事故のほか、相続問題、不動産取引、離婚事件、少年事件など。
事務所名:東京つばさ法律事務所
事務所URL:http://tokyotubasa.com