2期連続赤字からの経営建て直しを図るワタミが、組織と人事を大きく動かす。3月1日付けで、ワタミフードサービスなど子会社3社を統合。桑原豊社長が代表権を持たない取締役に退き、後任に現常務の清水邦晃氏が就任する。
新社長の清水氏は44歳。明大在学中から居酒屋和民にアルバイトとして働き、大学を中退してそのまま入社。最年少で執行役員に就任したプロパー(生え抜き)だ。「ブラック企業」の批判もあるワタミだが、現場の労働環境は改善するのだろうか。
「ブラック全否定」の桑原氏は退任
現社長の桑原氏は2009年6月、ワタミ創業者の渡邉美樹氏から初のトップ交代で社長に就任した。元ワタミ社員のナイン氏によると「上には厳しく、下には優しい」人物で、現場の評判はとてもよかったという。
「店舗のトラブルを解決できない本部長クラスが、電話越しに『暴力団からのクレームか?』と思うほど激しい調子で叱られることもあったようですが、課長あたりまでの社員には柔和な笑顔で接してくれる、優しい印象の方ですね」
以前にも担当分野の業績不振で降格を下されたが、新業態の『わたみん家』の店舗数を20店舗から10倍に成長させた功績が認められてワタミの社長として復活。しかし自社への愛着が強すぎたためか、新聞や雑誌のインタビューに対し、
「大声で『ブラックじゃない』と叫びたい」
「ワタミには、企業理念の中に『社員は家族であり同志』という言葉がある。そういう人に対して、労使の関係は基本的に存在しない」
と発言し、実態を知る人などから激しい批判を浴びたことがあった。
次期社長の清水氏は、ワタミが介護事業を立ち上げる際に居酒屋事業から異動して社長に就任した経歴を持つ。ナイン氏は、この人事は「売り上げアップと赤字縮小の対策」であり、労働環境の改善は進みそうにないと懸念を示す。
創業者は従業員に「今まで以上に自分の意見を言って」
「アルバイト上がりということは、社員やワタミの悪しき習慣を知りつつ、長く働いているわけですから、自社の労働環境を問題視していない傾向にあると思いますね。労働管理問題に着手する本気は、今回の人事からは感じられません」
ワタミは、書き入れ時である昨年12月の国内外食の売上高が前年比で85.2%にとどまり、業績回復の兆しが見えていない。ワタミ創業者の渡邉美樹氏は22日、今回の社長交代についてフェイスブックに次のように書いている。
「アルバイト出身でプロパー。44才。だからこそ、ひろえる声 だからこそ、響く言葉 だからこそ出来る、構造改革があるでしょう」
「ワタミグループ4万人の社員、アルバイトの皆さん。力を合わせて新しい先生のもと、新しい教室の空気を作って下さい。今まで以上に手をあげて自分の意見を言って下さい」
業績不振の背景には、若者の居酒屋離れや少子化による人材不足に加え、「ブラック企業」批判を受けてアルバイト学生や客が敬遠しているからという指摘もある。ワタミで働く人たちには、現場に問題があれば「今まで以上に」声をあげて欲しいところだ。
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