2015年01月22日 14:11 弁護士ドットコム
イスラム国による日本人人質事件に関して、イスラム国司令官との交流があるというイスラム学者・中田考氏(同志社大客員教授)が1月22日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。中田氏は記者会見で「人質の救助のため」として、「日本は、イスラム国が要求している身代金と同額の2億ドル分の人道支援を、イスラム国の支配地域で行うべきだ」という日本政府に向けた提案を明らかにした。
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中田氏はイスラム法学・神学の研究者で、イスラム教徒でもある。1992~94年には外務省の専門調査員としてサウジアラビアで働き、シリアには10数回渡航歴があるという。ただ、現在は、イスラム国に渡航しようとした北大生を手助けしたとして、警察の捜査対象となっている。
中田氏は、安倍政権の中東外交について「日本が今回表明した人道支援は、300万人のシリア難民の過半がいるとされるトルコが対象外となっていた。アラブ諸国、特にイスラム国からはバランスが悪いと見られる」「安倍首相の訪問国はエジプト・イスラエル・パレスチナ・ヨルダンと、イスラエルに関係する国だけだった。この選択をした時点で、アメリカ・イスラエルの手先とみられる。人道支援・難民支援とは理解されない」と指摘した。
そのうえで、「国際赤十字・赤新月社を通じ、イスラム国が要求しているのと同じ金額の支援を、イスラム国の支配下にある地域の『難民・人道支援』に限定するという条件を課して行う」という提案を表明した。
中田氏が日本政府向けの「提案」を表明しているシーンの動画はこちら(約1分)
https://m.youtube.com/watch?v=LPGU9nqFmm8
イスラム国支配下での人道支援を提案をした理由について、中田氏は「イスラム国の要求している(2億ドルという)金額は、日本政府が表明した難民支援の額と同じだ」「イスラム国の支配地域にいる国内難民を対象にした人道支援も、それと同額分行うべきだ」と説明した。
具体的な支援の方法としては「イスラム国支配地域で人道支援を行っている赤新月社やトルコを通じて、食料や医薬品、暖房器具、毛布など、人道支援以外には使えない物資を配ることだろう」と話した。
中田氏は自らの提案について「これはイスラム教徒・イスラム学者として、日本国民としての提案だ。日本政府にも、イスラム国にも受け入れられるギリギリの線だと思っている」と主張した。
中田氏は昨秋に警察の捜査対象となって以来、「イスラム国の関係者とはできるだけコンタクトを取らないようにしてきた」と話す。だが、いまでも、取ろうと思えばコンタクトを取れることが確認できているという。特に、イスラム国の司令官とされるウマル・グラバー氏と交流していて、連絡を取ることが可能だという。
中田氏は会見で「イスラム国の人たちに訴えかけたい」として、イスラム国の知人・友人へ向けたメッセージをアラビア語で読み上げた。
記者会見で配られたメッセージの日本語訳文は次の通り。
<ウマルさんへ、イスラム国の友人、知人達へ>
1.日本の政府に対して、イスラム国が考えている事を説明し、こちらから新たな提案をするから待ってほしい。
2.72時間で人質に対して、何かするのはやめてほしい。
3.私も行く用意もあります。
4.1月17日にヤズィーディの350人の人質を人道目的で解放したことを知っている。評価している。それで印象も良くなっている。日本人を釈放することがイスラムとイスラム国のイメージを良くするし、私も望んでいる。ムスリムの人も望んでいる。
(弁護士ドットコムニュース)