前々回、飲食店に勤務していると、同じビルのテナントの店主と人間関係のトラブルが起こりがちというエピソードを紹介しました。色々な人が集まるテナントだからこそ、予想外のことが起こる確率が高まるのですね。
今回は、ファミレスの店長を務めていた友人から聞いたエピソードです。ある日の営業中、アルバイトの従業員に「店内が焦げ臭い」と指摘されました。言われてみれば確かに臭いですが、店で火を扱うところといえば厨房しかありません。(文:ナイン)
消火でホッとしたのも束の間「何か白い粉が…」
ひとまず厨房に駆け込みましたが、火の元に問題はありませんし、換気扇も入っています。他の可能性は客席の喫煙者くらいですが、タバコの臭いでもありません。皆で原因を考えていると、裏口から出勤してきた従業員が叫びました。
「店長、1階の室外機が燃えてます!!!」
慌てて外に出ると、確かに室外機から炎が出ています。友人の勤めていたファミレスはテナントの地下1階。出火しているのは、1階に置かれた2階の飲食店の室外機でした。
自分の店が原因でないとはいえ、放っておくと被害が拡大します。慌てた友人は、店に備えてあった消火器を噴射。火も小さかったため、すぐに消せました。
ホッと一安心した友人ですが、これだけでは終わりませんでした。店に戻ると、今度は店内にいた従業員がこう言い出したのです。
「店長、何か白い粉みたいなのが舞ってませんか?」
目を凝らすと、確かに消火器の白い粉のようなものが店の中を舞っています。人体に影響があるかどうかは分かりませんが、飲食店は清潔感には人一倍気を使いますし、放置すれば気分が悪くなる人が出るかもしれません。
どう対応しようか考えていると、さらに混乱させる展開が。「ウ~、ウ~!!」という消防車とパトカーのけたたましいサイレン音が、店の外から鳴り響いてきたのです。
終わってみれば「いつものこと」
どうやら友人がボヤを鎮火させる前に、現場を見た人が消防と警察に通報したようです。しかし、すでに火は消えており、原因も別の店の室外機。店長としては、自分の店を漂う消火器の粉を何とかする方が先です。
店のエアコンの出力を最大にし、ドアを開けて空気を入れ替えていると、こちらが呼んだわけでもない警察が店の中に入ってきました。
「お忙しいところすいません。火事の状況を聞かせてください」
店の裏口付近でのできごとであったため、警察が事情を聞きに来たというのです。忙しい営業中ではありましたが、相手が相手ですから邪険にもできません。友人は仕方なく事情聴取に応じました。
店に戻ったころには消火器の白い粉もなくなり、長すぎる一日が終わりました。トラブル続きの話に「それは災難だったねえ」と慰めると、友人は何でもなかったかのようにサラッとこう答えました。
「店にいると、何かは分からないけどさ、絶対に何かあるよね!」
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