好転している転職市場だが、ミドル世代には依然として厳しい風が吹いている。転職サービスdodaの2014年上期調査によると、「40歳以上」の転職成功率は11.2%にすぎない。ただし07年下期の2.5%から比べると、かなり好転しているのも確かだ。
転職成功者の「平均年齢」も07年下期の29.1歳から、31.7歳へと年々上昇している。転職限界年齢が少しずつ上がっているのかもしれない。そんな中、2014年12月にはミドル世代の転職支援に特化した「キャリアリリース40」というサービスが登場した。敬遠されがちな40代前後の転職を、どう可能にするのか。
「35歳以下」というフィルターを外せば「即戦力」は存在する
「キャリアリリース40」を運営するルーセントドアーズ代表・黒田真行氏は、リクルートが運営する転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長だ。40代のミドル世代がこれまで敬遠されていたのは「分厚い慣習のカベがあったから」と説明する。
「求人営業が企業人事に『求める人材は?』と聞くと、『35歳以下』と反射的に答えが返ってくるが、これは単なる慣習であることが多い。現場には、年齢を超えた即戦力の求人ニーズは必ずあるし、活躍できるミドル世代も確実に存在する。問題は企業とミドルを『どうつなぐか』なんです」
「キャリアリリース40」は、求職者が登録した履歴書や職務経歴書(レジメ)を匿名状態でデータベース化し、154の業種や354の職種、経験してきた役割やポジションなどで細分化。独自のアルゴリズムで求人企業にピンポイントで提案し、採用フローに乗せていく仕組みを取っている。
企業には突然の退職や新しいプロジェクトの発足などで、突発的な人材ニーズが発生することが多い。そうした潜在ニーズに備えて経験やスキルが細分化された人材が、常にオススメされているというわけだ。
「35歳以下」というフィルターを外してみれば、職歴とスキルを備えたミドル世代が多数浮かび上がってくる。現在はそうした「即戦力」をみすみす企業が逃しているというわけだ。企業はニーズに適合する即戦力を見つけられると同時に、「それだけウチに合う人材がいるなら」と潜在的なミドルの求人ニーズを掘り起こす可能性もある。
「年齢だけで、企業と人が出会えないのは不条理」
これまでエグゼクティブ層未満の年収500~700万円ゾーンの人は、ミドル世代を迎えると転職サイトでの転職成功率は「1%を切るのでは」(黒田氏)という厳しい状況があった。しかし幸いにして、アベノミクスと少子化による「人手不足」という追い風も吹く。
さらに「キャリアリリース40」では、人材を人事担当者だけでなく「経営者」や「現場のキーマン」に人材を直接売り込む方法も取り入れようとしている。ニーズを素早く、正しく判別できる現場に人材を直接アピールできることで、企業が「会いたい」と思う確率が高まるのだ。
「成果主義が導入されて以降は、実際は年齢は関係なくなってきている職場も多いんです。例えば工務店の経営者だったら、戸建て住宅をたくさん売った実績のある営業経験者なら70歳であっても欲しい。アジアへの進出を考えている商社なら、シンガポールでの営業責任者経験はニーズがある。企業の現場には、そうした人事に話していないようなニーズが大量にあるんです」
中小企業など知名度の低い企業は、転職サイトに掲出しても応募者すら来にくいのが現状だ。しかし年収がそこまで高くなく、現場でバリバリ働いているミドル層なら、そのような会社に受け入れられやすくなっている。
内閣府の推計(2013年)によると、いわゆる「社内失業者」は465万人に達しており、36.5%が製造業だ。これは年齢の壁によって転職可能性を諦めてしまい、経験や能力を活かすことよりも、会社に残留することを優先した結果とも言えるかもしれない。黒田氏はこう話す。
「雇う側と、雇われる側のパワーバランスを変えたい。年齢だけで出会えないというのはお互いの機会ロスだし、あまりにも不条理すぎますよね。雇われる側にも選ぶ権利があるし、力関係がイーブンになっていけば、より人材が適材適所化されるのではないでしょうか」
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