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【ミリタリーへの招待】精鋭無比の第1空挺団・降下訓練始めに見る落下傘の色々

2015年01月21日 13:21  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

【ミリタリーへの招待】精鋭無比の第1空挺団・降下訓練始めに見る落下傘の色々

新年を迎え、自衛隊ファンには有名な「第1空挺団降下訓練始め」が1月11日、青天の習志野演習場で行われました。自衛隊唯一の空挺(パラシュート)部隊、第一空挺団の訓練の様子を防衛大臣臨席のもと、一般に公開して行われる大人気のイベント。ちょっと出かけてみました。


【元の記事はこちら】


第1空挺団というと「精鋭無比」が旗印。これは自分達が最も精鋭の部隊であるという誇りとともに、絶えずそうあり続けようという決意表明でもあります。そんな姿を見ることができるからこそ、降下訓練始めは多くの一般見学者を引きつけるんでしょうね。


集まった見学者に人気なのは訓練展示。陸海空各自衛隊に所属する各部隊の協力のもと、第一空挺団の隊員による空挺(エアボーン・ヘリボーン)作戦を中心とした「離島奪還作戦」の流れを実演します。総合火力演習と違って実弾射撃ではなく、空砲による模擬射撃ですが、AH-64、AH-1Sなどヘリコプターが低空を飛び、第1戦車大隊の10式戦車や各種装甲戦闘車両が演習場を駆け巡る様子は迫力満点。


ここでは、主役である第一空挺団の使用する落下傘(パラシュート)に焦点を当てて紹介していこうと思います。今回、昨年秋から納入の始まった新型が一般初公開となり、3種類の落下傘をまとめて見られるという貴重な機会になったのです。


まずは、第一空挺団の中でも限られた隊員しか運用できないという自由降下傘(通称:MC-4)。これは高高度からの自由降下で使用するもの。滑空性と操縦性に優れ、降下開始点から最大で20km以上離れた場所へ着地することが可能。相手に気付かれない隠密作戦や、強攻偵察に適した落下傘です。形状は一般のスカイダイビングに使われるものと同じですが、装備などで重量が増している為、その分面積が大きくなっているのが特徴。


この自由降下傘を運用する為には、空挺隊員の中から選抜されて自由降下課程に入り、練成を受けなければなりません。課程を修了し、資格が得られると、空挺のウイングマークの上に自由降下(Free Fall)の頭文字「FF」が付いた自由降下徽章の着用が許されます。


ただ、この自由降下課程は常設されている訳ではないそうで、資格を得られるかは実力だけでなく、課程が設置されるタイミングで選抜される運もあるようです。


現在主力となっているのが、フランスで開発された空挺傘696M1。「12傘(ひとにいさん)」の通称で呼ばれていますが、これは平成12(西暦2000)年に採用されたから。国産で「◯◯式」と制式化される場合は西暦の末尾を採って名付けられますが、これは(国内でライセンス生産されていますが)国内開発品ではないので「00式」とはならず、平成での年号が通称として使われています。


696M1の改良型として、国内で唯一パラシュートなどの救命装備品を製造している藤倉航装(小惑星探査機はやぶさのサンプル回収容器用パラシュートも同社の製品)で開発されたのが、新型の13式空挺傘(通称:13傘)。2013(平成25)年に制式化され、2014(平成26)年11月から納入が開始されました。


最大の特徴は、傘体保持能力が高いこと。空中で互いに接触したり、上下に重なった(上になった落下傘がはらむ空気の塊が圧力となって下の落下傘にかかる)場合でも傘体がつぶれず、落下傘としての性能が落ちない為、降下時の安全性が高くなっています。これにより、今までは空中接触を怖れて降下間隔を広げていたのですが、機体の両側から間隔を詰めての連続降下が可能になりました。


短時間で多人数の降下が可能になると、部隊の降下する範囲(ドロップゾーン)が狭まり、降下した後に集合する時間が短縮されます。迅速に作戦行動に移れるのは大きなメリット。


今までの空挺傘696M1(12傘)と13式空挺傘(13傘)の識別点ですが、まずは色。696M1は茶色っぽい感じですが、13傘は緑色が強いカラーリングです。また、696M1の傘体はほぼまん丸なのですが、13傘は頂点(最上部)に半円形の押ボタンのような突起があるのが特徴。


外見は良く似ていますが、こんな違いがあります。これからは13傘導入が進み、696M1は無くなっていくので、ふたつの空挺傘を見較べられるのは今だけ。このレアな機会を見逃さないようにしたいものですね。


(取材:咲村珠樹)