政府が掲げる「女性が輝く日本!」のスローガン。しかしいまひとつ、ビジョンが明確にならない。そんな日本の参考にというわけなのか、2015年1月19日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は女性が活躍する国を紹介していた。
中国・雲南省の山奥に、モソ族という少数民族が暮らす「女の国」と呼ばれる地域がある。ここでは土産物店やホテルの運営、道路工事や家事・育児もすべて女性が行う。男たちは道端でトランプに興じ、「仕事はしていない。遊んでいるだけ」と笑う。
男性は不満「普通の結婚がしたい」
この集落には中国屈指の美しい湖、濾沽湖(ろここ)を目当てに多くの観光客が訪れるが、民族衣装をまとって観光客相手に踊りを披露するのも女性だ。
モソ族のイーイーさん(24歳)は雲南省最大の名門大学を卒業した女性だが、都会からこの村に戻ってきた理由を「ここが女の国だから」と明るい笑顔で話す。
「誰かに強制されてやるのではなく、自分のやりたいようにできるんです」
13人で暮らす一家の主は最年長の女性で、財産の管理と、家族に店番や育児など仕事の指示を担っている。
モソ族は母方の血縁で家族を形成する「母系社会」で、結婚は「通い婚」。夫は自分の母方の実家に住んでおり、妻のいる家へ夜だけ通う。夫には子どもの養育権はなく、妻子を養う義務もない。「父親」という文字すらないという。
この地域特有の女性の悩みを聞いてみると、「まったくありません、女性の悩みってなんですか?」と皆笑顔で話し、「ほとんどの物事は自分で解決できるので、男性は必要ありません」。男性は「景色ですね」とのこと。しかしイーイーさんの恋人は、
「通い婚ではなく普通の結婚がしたい。僕が働いて自分の子どもを育てたい」
と打ち明けてきた。イーイーさんは驚きながらも、やはり「通い婚がいいわ」と応じなかった。確かに女性たちは明るくみな活き活きしていたが、いまの時代、不平等感を募らせる男性も多いことだろう。
リーマンショックで大転換したアイスランド
北欧の島国アイスランドも女性が強く、「世界・男女平等ランキング」で6年連続1位を獲得している。双子の赤ちゃんの父親であるアルナソンさんは、大手スーパーの店長で育児休暇中だ。
「育児をサポートしない企業は国民から嫌われ、売り上げも落ちます。妻のキャリアも傷つけたくないからね」
アイスランドの育児休暇は9か月で、妻が3か月、夫が3か月取得する。残りの3か月をどちらかが選択して取り、復職後は元のポストに戻さなくてはならない。男性はほぼ100%取得するし、その間の給料は8割を国が支払うという。
一方で、日本の育児休暇は1年半、安倍政権はさらに3年に延長して、給料の50%を国が負担する案を出しているが、現在のところ男性の取得率は2%。日本の男性の労働時間は世界一で、取りたくても取れないという現状が続いている。
アイスランドは、以前は漁師国家ならではの「男社会」だったが、リーマンショックで国家の財政が破たんしたのを機に女性活用に舵を切った。破たんの原因を調査した結果、大手三大銀行のトップがみな「男性」だったからだ。
3つの銀行を国有化し、うち2つのトップを女性にした。女性の首相が選ばれ、国会議員の女性も40%増。企業の管理職を40%女性にする制度も導入し、家事と育児を男女で分け合う国になった。いまでは共働き率が約98%というアイスランドだが、出生率も2.0に上がった。
「男性帝国は滅びる」と未来予測
太田泰彦氏(日本経済新聞社 論説委員兼編集委員)は、これまで日本の女性は出産かキャリアかの二者択一しかなく、最大の壁は「男性の意識」で、男性目線のやりかたは今後の世の中にはそぐわない、「男性帝国は滅びる」と未来予測し、こう指摘した。
「日本の未来に必要なのは『多様性』であり、これから伸びるのは、多様性があるしなやかな組織です」
番組では、「女性の社会進出を妨げる壁として「家事・育児の壁」も挙げ、日本の家事代行サービス会社がフィリピンから国家資格を持った家政婦のプロを雇入れる準備をする動きや、ヤマト運輸が家事代行業を始めた様子も紹介した。
ただし、家政婦を雇える家庭は経済的にも限られており、根本的な問題を解決していない気がした。中国のモソ族は極端な例だが、男女が家事・育児を共同で行う意識が生まれない限り、出生率も増えず日本は本当に滅びの道を歩むのかもしれない。(ライター:okei)
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