2015年01月20日 19:41 弁護士ドットコム
サザンオールスターズが昨年の大みそかに横浜アリーナで開いた年越しライブで、ボーカルの桑田佳祐さんがおこなったパフォーマンスについて、桑田さんと所属事務所アミューズは1月15日、配慮が足りない部分があったとして、お詫びのコメントを発表した。
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ライブの中で、桑田さんは、ズボンのポケットから昨年秋に受賞した紫綬褒章を取り出して、観客に披露。オークションにかけるようなパフォーマンスをおこなった。桑田さんと事務所は「ジョークを織り込み、紫綬褒章の取り扱いにも不備があったため、不快な思いをされた方もいらっしゃいました。深く反省すると共に、ここに謹んでお詫び申し上げます」と謝罪した。
今回、桑田さんと事務所が「お詫び」を表明したことから、ツイッター上では「ミュージシャンがあんなことで謝っちゃまずいですよ。ますます自由な表現がしにくくなる」「謝るくらいなら最初からやらないほうがマシ」など、さまざまな意見が出た。桑田さんと事務所は「お詫び」すべきだったのか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
桑田さんと事務所による「お詫び」に賛成か、反対か。弁護士ドットコムでは、そのような質問を投げかけ、以下の3つの選択肢から回答してもらった。
1 「お詫び」したことに賛成→3票
2 「お詫び」したことに反対→2票
3 どちらでもない→4票
9人の弁護士から回答が寄せられた。回答は<どちらでもない>が4票と最も多かったが、<賛成>3票、<反対>2票と意見がわかれた。
そのうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士6人のコメント(全文)を紹介する。(掲載順は、どちらでもない→賛成→反対の順番)
なお、桑田さんは1月17日夜、ラジオ番組に出演し、今回の件について説明した。ズボンのポケットに褒章を入れていた理由について、桑田さんは「あせったのか、段取りを間違えて、あわててポケットに入れてしまった」と釈明。オークションのパフォーマンスついては「下品な冗談を言うべきではありませんでした」と謝罪した。弁護士の意見のうち、巨瀬弁護士以外は、このラジオ番組よりも前に回答されたものである。
●どちらでもないという意見
【秋山 直人弁護士】「サザンオールスターズと桑田さんの大ファンです。今回の『お詫び』は、桑田さんの本心ではないと思います。今後も音楽活動を東証一部上場の大手プロダクションで続けていくために、大人の対応を取ったということだと思います。紅白での選曲・歌詞や『つけ髭』の演出についての解釈は、視聴者それぞれが各自ですれば良いことであり、一定の解釈に基づいて歌手を非難するのは筋違いだと思います。このような大人の対応をせざるを得なかったことは残念です」(2015年1月16日)
【中井 陽一弁護士】「お詫びの文章を見ましたが、よく考えられた文章であるという印象を持ちました。自らの表現が違法であったことを認めたわけではないものの、不快な思いをされた方に対してお詫びするということは、トップエンターテイナーとしての立場を考慮しての内容だと思います。私は今回のサザンの映像を見ていないので、その内容自体については批評できませんが、表現の受け手側も、寛容になるべきと思うことはあります。批判によって、表現者が萎縮しすぎて、表現の自由が損なわれないようにしたいものです」(2015年1月16日)
【居林 次雄弁護士】「ミュージシャンは、それなりの自負を持って活動しているのですから、多少のギャグがあって然るべきです。その行動の端々をとらえて、批判するのもどうかと思われます。ただしミュージシャンが、世間の人よりも別格であるとか、一段落ちるとか、人種差別のような目で見ることにも抵抗があります。表現の自由を100%発揮する職業ですから、世論におもねることなく、堂々とふるまってほしい。ただし、人に不快の念を与えるような行動は控えてほしいと思います」(2015年1月16日)
【岡田 晃朝弁護士】「自分の気持ちを表現するのは自由でしょうし、それを歌うのも自由でしょう。それを批判するのは自由ですし、反論するのも自由でしょう。それについて謝るのは自由ですし、謝らないのも自由です。それが表現の自由というものだと思います。一方的な侮辱や名誉棄損、脅迫的な言動は許されませんが」(2015年1月16日)
●「自由な表現として尊重」 謝罪に賛成という意見
【巨瀬 慧人弁護士】「何かを自由に表現できる。とても大切なことだと思います。表現に対して、誰かが自由に批判できる。これも大切なことだと思います。誰かの批判を受けて、軌道修正することもできるし、当初の意見を貫くこともできる。自由に選べる。やっぱり大切なことだと思います。桑田さんが『お詫び』することを選んだのであれば、それも自由な表現として尊重したいです」(2015年1月19日)
●「Rockではない」 謝罪に反対という意見
【濵門 俊也弁護士】「アミューズと桑田さんの連名コメントを拝見いたしましたが、『お詫び』との題名に引きずられすぎ、真意が外れている気がします。上記コメントの冒頭にもあるとおり、コメントの主旨は『お詫びとご説明』のはずであり、『お詫び』しているのは紫綬褒章の取扱いの件だけのようです。当職は、少なくとも音楽は好き嫌いがはっきり分かれる分野である性質上、批判のたびにミュージシャンが『お詫び』するという姿勢はいただけない(Rockではない)気がします」(2015年1月16日)