「好きなことは仕事にするのがいいのか、それとも趣味に留めておくのがいいのか」。人気漫画「ワンピース」の作者・尾田栄一郎さんの言葉をキャリコネニュースが取り上げたところ、ネットで大きな反響があった。
特に配信先のニコニコニュースでは900件以上のコメントが寄せられた。記事では尾田さんが漫画家志望者に向けた、「ずっと好きな事した方が楽しいに決まっています」という言葉を紹介。これに対し「好きだけど成功しなければ辛いだけ」といった反論がネットで挙がったことを伝えた。
家族のために「賃金で仕事選ぶ」人もいる
クリエイティブ志向の強い読者の多いニコニコニュースでは、現実に成功できるかどうかはともかく、尾田さんの考え自体は間違っていないと認める人が意外にも多く、尾田さんを批判する人に対する反論が目に付いた。
「本当に好きでやってたらそのうち技術が付いて形になる。本当にそこまで頑張った?」
「この反論って全部負け犬の遠吠えだよね。ほとんどの人が諦める、それはつまりぶっ倒れるほど好きじゃなかったってこと」
自己啓発系のビジネス書では、よく「努力は必ず報われる。報われないのはまだ努力が足りないから」と言われる。好きなことを仕事にすることができずに諦めた人というのは、努力や好きの度合いが足りない、というのだ。まさに「ワンピース」の世界観そのものだ。
しかし、仮に好きなことで努力をしてプロ級の実力があったとしても、競争が激しい世界だと、それで生計を立てられる人は限られるのも事実だ。そのため、
「好きな事を仕事にした方が楽しいのは確かに真実だと思う。そう出来ている人もいる。だがそれでは食えない人がほとんどなのが現実だ」
という見方があった。努力が報われるまでには時間が掛かるが、それまで待てる環境にあるかどうかは、自分だけの問題では済まされない。独り身なら好きを仕事にできても、家族がいると「賃金で仕事選んで息抜きとして趣味を残さないとキツいかな」という人もいた。
好きな時にマンガを描く「冨樫は神の領域」
実際に好きを仕事にした人からは「仕事故、自分のペースでとはいかず、休日の趣味ですらその分野を楽しめなくなってしまった」という経験談も出ていた。仕事となると常にアウトプットを求められ、質に対するプレッシャーも強くなる。
尾田さん自身も以前インタビューで、毎週19ページの連載を仕上げるのは「しんどい」と語っていた。好きを仕事にして、さらに楽しむのは、相当好きでないと厳しそうだ。ニコニコ読者からは、
「なら好きな時にマンガを描いて好きな時に休載する冨樫は神の領域だな」
というコメントもあった。たしかに羨ましい働き方ではある。ただ、仮に全ての人が好きなことを仕事にすると、それはそれで困る、という見方も出ていた。
「特定の職ばっか求人が増えて社会が成り立たなくなるな……」
「好きなことを仕事にできない人がいるからこそ世界はうまく回っていると思う」
例えば、いわゆる「3K」仕事について、仕事を覚えるうちにやりがいを感じたとしても、最初から好きで選んだ人はそう多くはないかもしれない。多くの人に敬遠されがちな仕事を引き受けてくれる人がいるから、その他の人が快適に過ごすことができるということはあるだろう。
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