2015年01月18日 10:31 弁護士ドットコム
身につけて持ち歩ける次世代の情報端末として注目を集めている「ウェアラブル端末」の展示会「第1回ウェアラブルEXPO」が1月14日~16日、東京ビッグサイトで開かれた。1月15日には、ITの法律問題にくわしい小林正啓弁護士が、ウェアラブル端末の法律問題について講演した。
【関連記事:ユニクロ下請け工場「罰金で労働者を管理していた」香港NGOが調査結果を発表】
ウェアラブル端末は、スマートフォンやタブレット端末の「次」のスマートデバイスとして注目されている。グーグルが開発を進めている「グーグルグラス」などのメガネ型端末や、ソニーが発売している「スマートウォッチ」などの時計型端末などが代表的な製品だ。
小林弁護士は、メガネ型の端末をかけるだけで、カメラ機能により周囲の光景を簡単に撮影できる「グーグルグラス」を取り上げ、盗撮など「撮影する側」と「撮影される側」の間に生じるプライバシー問題を解説した。グーグルグラスはすでに開発者向けに発売されているが、アメリカやヨーロッパではプライバシー侵害がクローズアップされていることを指摘した。
また、2014年の情報通信白書に掲載されたデータ(MM総研調べ)を紹介した。それによれば、グーグルグラスなどのウェアラブル端末で盗撮や追跡をされることについて、日本人の59.5%が「不安に感じる」と回答しており、米国人の47.2%を上回っているという。小林弁護士は「日本でも規制の動きが発生しかねない」と懸念を口にした。
さらに、無許可撮影の法的問題について、観光地で撮影する際に、他の人が映り込んでしまう問題を引き合いに出した。「観光地の場合、お互いに写真を撮影することを承諾していると考えることができる。ただ、この承諾は、プライベートで撮影して、プライベートで利用することについてのものだ」と述べ、写真をSNSなどで公開してしまうと、法的問題が生じうることを指摘した。
また、電車内において、着衣の女性の顔や足などをUSBメモリ型のカメラで撮影した男性が神奈川県迷惑防止条例違反(卑猥な言動)で逮捕された事例(2014年8月28日)を挙げ、「グーグルグラスで赤の他人を付け回したり録画したりすると、条例違反になる可能性もある。使い方には気を付けなければならない」と語った。
小林弁護士は、利用者側のプライバシー問題についても解説。利用者には、位置情報や健康情報、購買情報、会話、視線などのプライバシー情報が存在しているとして、「クラウドに情報があがる場合、情報を第三者に渡すことになるので、法律上の問題が出てくるだろう」と語った。
プライバシー問題をクリアするためには「本人同意」が一つの手段だが、小林弁護士は、1つの問題事例として、恋人男性のスマートフォンにアプリをインストールさせて、現在地情報やバッテリー残量、アプリケーションの一覧を女性会員に伝えるサービス「カレログ」を挙げた。このサービスは、リリースした2011年にプライバシー侵害の可能性が問題になり、2012年に終了した。
このサービスは、端末保持者である本人の同意を前提としていた。しかし、小林弁護士は「やましいところがなければ(インストールを)承諾してくれと言われれば、承諾せざるをえなくなる。承諾を取ればそれでいいかというと、そうでもない。ウェアラブル端末も、承諾書に同意すれば、法律的には有効だが、何をしてもいいわけではない」と語った。
さらに、グーグルグラスのようなメガネ型端末で、誰が何を見ているのかという「視線」の解析が可能になったことを挙げ、「食べ物屋の看板を見ていると、(端末が)おすすめの店を教えてくれるようになる。便利かもしれないが、うるさいと感じる人もいる」と指摘。「見たくない広告を消すことができる機能を埋め込んでおくことによって、ウェアラブル端末は受け入れられるのではないか」と語った。
(弁護士ドットコムニュース)