2015年01月16日 20:01 弁護士ドットコム
地下鉄サリン事件をはじめとする4つの事件で殺人罪などに問われているオウム真理教の元信者・高橋克也被告人の裁判員裁判が1月16日、東京地裁で始まった。長年にわたって逃亡を続け、一連の関係者の中で最後に起訴された高橋被告人の裁判は「最後のオウム裁判」と呼ばれている。
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高橋被告人は地下鉄サリン事件で、実行犯を車で送迎したとされているが、この日は「地下鉄車内にまかれたものがサリンだとは知りませんでした。殺人の共謀もありません」と、無罪を主張。他の事件についても殺意や共謀を否定し、起訴事実のほとんどの部分を否認した。
この日の公判には、地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさんら、被害者側の4人が「被害者参加制度」を利用して参加した。4人は公判終了後、司法記者クラブで会見を開き、それぞれの思いを語った。
高橋シズヱさんは「入廷したときに、非常にやせているなあ。逮捕された時のニュースでみたときよりもやせているなあと思いました」と、高橋被告人の印象を述べた。
初公判に被害者やその家族が参加していることは、被告人にも知らされていたという。高橋シズヱさんは「ずっと被告人を見ていましたが、被害者席に対して目をあわせるとか、謝罪の気持ちがあるような表情とか、もちろんお辞儀もしませんでした・・・。(被害者のことを)どう思っているのかなと思いました」と話した。
ただ、検察官が被害者の名前を読み上げた際には、ぎゅっと口に力を入れて、それまでの表情とは違う表情を見せたという。高橋シズヱさんは「何を感じていたかまではわかりませんが、表情が違うということは、それなりに、これだけ被害を与えたんだなということは意識していると思いました」と語った。
一方、オウムによる公証役場事件で父親を亡くした假家実(かりや・みのる)さんは「高橋被告人はこれまで、被害者に対する謝罪等をしていません。被害者に対してどのような感情があるのか、裁判では、そこを中心にチェックをしていきたいと考えています」と述べた。
初公判の高橋被告人の印象については「どういう表情・態度か、注目していたので、かなりの時間、彼の顔をみていましたが、目が合ったということはありません。私たちに対するアクションは一切なかったと思います。今の段階では、彼に謝罪の気持ちがあるのかどうか、一切わからない」と話した。
地下鉄サリン事件で、妹が身体に重い障害をおった浅川一雄さんは「しばらくして判決が出たとしても、僕たちの生活が変わるわけでもないし、妹の状況が良くなるわけでもありませんが、ひとつ大きな通過点ではあります。20年目、最後の裁判というところも含めて、いちど自分自身や家族、特に妹の今後の生活のことも見つめ直していきたいという考えから、出席させてもらいました。
(高橋被告人が)ずっと逃げてきた中で、自分が携わった事件がどれだけの人に迷惑をかけて、どれだけの人に影響を与えたかを、本当に把握しているかどうか。聞いてみたいと思います」と話していた。
被害者参加制度を利用して裁判に参加する場合、被害者の家族にも、被告人質問や意見陳述の機会が与えられることがある。高橋シズヱさんは「機会がありましたら、被害についても話をしたいと思っています」と述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)