昨年のジュール・ビアンキの事故を受けて発足した調査委員会はF1シーズン開幕前にウエットタイヤの本格的なテストを行うことを勧告しているが、実現に向けた動きが見られないとピレリが明かした。
ウエットコンディションとなった日本GP決勝でビアンキはクラッシュ、重傷を負った。F1での安全性向上のために昨年10月に発足した事故調査委員会は、396ページにおよぶ報告書を提出、12月にFIAはその概要を公表した。
委員会はアクシデントの分析や今後の対策についての提案を行っており、対策のひとつとしてピレリが最大限に優れたレインタイヤを提供できるよう、本格的なウエットテストを行う機会を与えることを勧めている。
「ピレリが提供したウエットウェザータイヤの性格がビアンキの事故やその結果に大きな影響を及ぼしたわけではない」と報告書には記されている。
「しかしながら、タイヤサプライヤーが開幕戦に最新の開発がなされたタイヤを供給できるように、F1シーズンと次のシーズンの間にウエットウェザータイヤを適切な形でテストし開発するための準備がなされることを勧告する」
ドライバーたちからピレリのウエットタイヤに対する批判の声が出ているものの、現在のF1レギュレーションによりテストの機会が厳しく制限されている。
スポーティングレギュレーションにはプレシーズンテストの中の1日はウエットタイヤのテストに当てなければならないと定められている。さらにFIAは本格的なウエットタイヤテストを開催することを検討しているが、今のところ大きな進展はない。
ピレリのモータースポーツディレクター、ポール・ヘンベリーは、ピレリとしては徹底的なウエットタイヤテストを行いたいと考えているが、チームからの合意がまだ得られていないと示唆した。
タンク車を使用して路面を濡らして行った昨年のウエットテストについて、「ヘレスのウォータータンクは我々が希望するようなものではない」とヘンベリーは述べている。
「ポール・リカールかフィオラノなら理想的だった。目的どおりの作業を行えるコースはこのふたつだけなのだ。しかし(ここでテストをするには)議論が必要になる」
「毎年シーズン開始前に本格的なウエットテストを行うことができれば、全員にとってメリットになる」
「チームはクロスオーバーポイントについて早い段階で取り組むことができるし、ドライバーはマシンパフォーマンスへの影響に慣れることができる。我々が施した変更がどういう影響を及ぼすのかを確認できる」
ウエットテストを実現させるための話し合いは進んでいるのかと聞かれたヘンベリーは、「今のところはそういった兆候はない。我々としてはやりたいのだが、正しい形で行う必要がある」