ホームレスに募金したら、彼らはそれをどう使うのか――。米国カリフォルニア州アナヘイムで昨年暮れに撮られたビデオ動画が、YouTubeで3000万回以上も再生されています。
画面に登場するのはパンク風の若者、ジョーシュ。彼は視聴者に向かって「ホームレスにお金をあげたら、どう使うか知りたいと思ったことある?」と質問を投げかけると、「ここにある100ドル(約1万2000円)をホームレスにあげて、それがどう使われるか見てみよう」と、少し離れたところにいたホームレスへ駆け寄ります。(文:夢野響子)
涙を流した彼は、まっすぐ酒屋に入ってゆき…
「僕、ジョーシュ。元気かい?」 相手はトーマスと名乗り、募金を呼びかけるプラカードを掲げながら、食べ物を買うためにお金が必要なことを語ります。
「たいしたことできないけど、少しでも社会に恩返しできたら」
と言いながら、100ドルを差し出すジョーシュ。募金にしては破格の金額に、トーマスは信じられない表情。「ほんとに?」と言う時には"Are you sure, Sir? "と敬語になってしまい、「こんなことは一度もなかった」と感極まって涙を見せます。
ジョーシュが去った後、カメラがトーマスを追うと、彼はまっすぐ酒屋へ入っていきます。彼の買い物袋には何が入っているのか。やっぱりお酒に消えてしまうのでしょうか。
カメラは、公園のベンチにたむろしているホームレスたちに近づくトーマスを映し出します。袋の中から取り出したケーキやポテトチップスを手渡すトーマス。それらを配り終わったところへ、ジョーシュが登場します。
隠し撮りを謝ると、トーマスは「ああ、それ(もらった100ドル)で俺がお酒でも買うと思った?」と聞きます。「そうなんだ、でも」とジョーシュ。「あの人たちを知ってるの?」
トーマスは、彼らとは特に知り合いではない。ただ、お金では買えないものがあるから、自分のやってることに喜びがあると話し出します。
「真人間だって、成り行きで一文無しになる場合もある」
トーマスは以前、両親と住んでいましたが、病気になった両親のために仕事を辞めました。父親は病院に入れたけれど、医療保険では部分的なカバーしかされないし、誰かがついていなければならなかったからです。
がんで父親が他界した数週間後に母親も腎臓疾患で亡くなり、4ヶ月前にアパートは手放さざるを得なかった彼は、気がついてみるとホームレスになっていたそうです。
「人は、アルコール依存や怠慢でホームレスになると思っている。でも、そうじゃないんだ。真人間だって、成り行きでそうなっちまう場合もある。色々不都合なことが重なって、一文無しになることがある。ここにいるのは、いい人間たちだ」
ビデオは改めて、別の100ドルを寄付するジョーシュのシーンで終わりますが、人気ユーチューバーでもある彼のフェイスブックによると、実はこれには続きがありました。
心打たれたジョーシュは、トーマスのためにオンラインで募金を集め、年末にはサプライズプレゼントとして彼をしゃぶしゃぶレストランへ招待。彼が自立できるように、職業訓練も秘密で計画しているようです。
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