2015年01月10日 13:31 弁護士ドットコム
「郵便ポストに焼き肉のたれが入れられた」。そんな通報が1月3日、大阪府箕面市の郵便局からあった。報道によると、回収作業をしていた郵便局の担当者が汚れを発見。汚れは付近のポスト計3つについていて、年賀状など計300通が汚れた。
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ポストからは焼き肉のたれと書かれたアルミパックやラーメンのスープと書かれたパックがみつかった。箕面警察署は、悪質なイタズラとみて捜査しているという。こうした郵便ポストへの「悪質なイタズラ」はたびたび起きている。宮城県仙台市では昨年12月、油が入れられ、年賀状など約700通が被害を受けたという。
郵便は今でも、重要なコミュニケーション方法のひとつだ。そんな郵便物を汚してしまうというのは、単にモノを汚す以上の意味がありそうだ。こうしたイタズラは、どんな犯罪になるのだろうか。刑事事件にくわしい冨本和男弁護士に聞いた。
「ざっと考えて、3つの犯罪にあたる可能性があります。(1)刑法の器物損壊罪(2)刑法の業務妨害罪(3)郵便法違反です」
冨本弁護士によると、「焼き肉のたれ」をポストに入れることは、3種類もの犯罪にあたる可能性があるという。
「(1)からそれぞれ検討してみましょう。器物損壊罪の『損壊』とは、社会通念上、『物の効用を失わせる行為』を意味します。
もし、『焼き肉のたれ』がかかったら、年賀状は台無しになりますよね。そういった状態も『物の効用を失わせた』、つまり『損壊』に該当すると考えられます」
たしかに、新年そうそう「焼肉のたれ」でべたべたになった年賀状を、受け取りたくはない。
「また、ポストに焼き肉のたれを入れれば、年賀状の配達業務を妨害することになるので、(2)業務妨害罪にも該当すると考えられます」
では、3番目の郵便法違反というのは、何だろうか?
「郵便法は、郵便サービスを、安く公平に提供するために定められた法律です。
そして、郵便法78条では、ポストに対して損傷を与えることや、配達の障害になるようなことをすることが禁止されています。ポストに『焼き肉のたれ』を入れれば、配達の障害になりますから、このルールに反することになると考えられます」
業務の邪魔になるという点では、刑法の業務妨害罪と同じように思えるが、なぜ別の法律で禁止されているのだろうか?
「郵便は重要な社会的基盤ですから、郵便業務を妨害した場合、刑法の業務妨害罪や器物損壊罪よりも重く処罰しよう、と決められているのです。
郵便法78条違反の法定刑は『5年以下の懲役または50万円以下の罰金』で、法定刑が最大『懲役3年』の器物損壊罪や業務妨害罪よりも重くなっています。
したがって今回のようなケースでは、器物損壊罪と業務妨害罪に優先して、郵便法違反が適用されることになるでしょう」
冨本弁護士はこのように説明していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp