面接では就活生からいろいろな質問を受けます。その中でも、毎年1度は必ず聞かれる質問があります。それが「産休制度はありますか?」というものです。この問いに対する答えは決まっています。
「当然ありますよ」
これしかありません。なぜなら、産休については労働基準法という法律によって定められているからです。企業が雇用する場合、必ず備えていなければならない制度なのです。(文:河合浩司)
学校の就職課でも「確認しなさい」と指導しているけど
もちろん募集要項には「産休制度あり」とあえて明記していることもあります。しかし、明記していない企業にも産休制度はあるのです。弊社の若い採用担当者は「あると答えるしかないのに、どうしてわざわざ聞くのでしょうか?」と不思議がっていました。
「『制度がありますか?』と聞くことは『御社は労働基準法違反をしていないですよね?』と聞いているのと同じ意味になってしまうのに…。これって、実はすごく失礼な問いですよね」
ただし、学生の質問にはある背景があります。就活生を取り巻く情報源には「産休制度の有無を確認しろ」という内容があることが多々起こっているのです。
例えば、学校の就職課。ある大学の就職ガイダンスでは、職員が「女性のみなさんは、志望企業に産休制度があるかどうかを必ず確認してください」と指導していました。全校生徒が集まるガイダンスで、この内容です。
就職支援関連の本にも、同様の内容はよく書かれています。これらを鵜呑みにした学生さんが面接でそのまま聞いてしまうのも、ある意味で仕方のないことです。
面接でわざわざ産休について質問をする学生さんは、「妊娠した後も働けるかな? このことを理解してくれる会社なのかな?」と不安を持っているはずで、だからこそ問いをしているのだと思います。しかし彼女らの不安を解消させるには、制度の有無を聞くだけでは解決に至りません。
制度が実際に機能しているかどうか「実態」を聞こう
この不安を少しでも解消するには、質問を変える必要があります。「制度の有無」ではなく、「実態」を聞く問いにすることです。例えば、次のような問いです。
「いつかは子供を欲しいと思っているので、出産のことも気になっているのですが、御社の○○課では産休を取られている方は何名くらいおられますか?」
実情を聞けば、制度が実際に機能しているかどうかを確認することができるでしょう。この時、明らかに人数を言いよどむ採用担当者がいる会社があれば、入社を考えた方がいいかと思います。人事にいる人間なら、ある程度は把握していて当たり前ですから。
大学の就職課は、就活生に指導するにあたり「産休制度は法律によって決められている」ことを正しく説明してあげた方がいいでしょう。その上で、上記のような「制度の実情を、相手に失礼にならない問いで確認すること」を教えてあげてください。
社会人になってしまえば当たり前なことでも、学生さんは知らないものです。ウケがいい自己PRや自己分析でお茶を濁すくらいなら、社会の一般常識を伝えてあげることの方が、遥かに意味があるでしょう。
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