2015年01月08日 20:51 弁護士ドットコム
カップ焼きそば「ペヤング」のゴキブリ混入問題をきっかけに、食品の「異物混入」がクローズアップされている。今度はファストフード大手「日本マクドナルド」の商品にも「ビニール片」や「人の歯」などの異物が混入していたことが相次いで発覚し、波紋はさらに広がった。
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同社は1月7日、東京都内で緊急記者会見を開き、取締役が状況を説明したが、そのやり方や内容については批判の声も起きている。食品業界で続発する「異物混入」にどう対応すればいいのか、広報戦略のコンサルティングを手がけるフライシュマン・ヒラード・ジャパンの田中愼一社長に聞いた。
——日本マクドナルドの対応で最大の問題は何だったのか?
「公表のタイミングが遅かったことでしょう。ネットの登場により、世間は早さを求めるようになっています。4~5年前だったら、今回のようなスピードでも批判はなかったかもしれません。しかし、人が直接口にするもの、生活に直結する商品については、より早いスピードでの対応が求められるようになりました。
今回の場合、1月3日の深夜には異物混入が把握できていたのに、発表が遅れました。せめて5日には何らかの対応をすべきだったのですが、結果としてウェブサイトでの発表は6日、記者会見は7日になってしまいました。もし5日に会見をやっておけば、状況は変わったでしょう」
——今回の記者会見は、サラ・エル・カサノバ社長が不在であるなど、批判を受けかねないポイントが多かったが、どんな問題があったのか?
「今回、社長は海外にいたとのことですが、クライシスが起きた際には、やはりトップが出てくることが重要です。そして、世間の疑問に対して、きちんと返答しなければなりません。
そうしないと、『今までに公表していないケースもあったのではないか』『公表基準はどうなっているのか』『原因不明のままで放置していたのか』など、疑問が次々に浮かんでしまいます。今回は準備不足だったように感じました」
——特に、異物混入の「公表基準」についての説明は、適切だったといえるのか?
「公表のやり方については、『個別対応』(非公表)と『そうでないもの』(公にするもの)の2つに区別することを説明していました。ここでパンドラの箱を開けてしまいました。結局はどちらにしても、消費者からすると『品質問題』なのです。そうであるのにもかかわらず、区別したことは失敗でしょう」
——発信したメッセージの内容に問題はなかったのか?
「加害者は自己主張をしてはいけません。品質への対応が適切だったのかを問われて、『適切だ』と答えていました。しかし、100%適切だったと言い切ることはできないでしょう。真剣に受け止めて、『適切に対応したつもりだったけれど、改善の余地はある』と答えることが重要です」
——ただ、異物混入は、どこでも起きていることではないのか?
「食品業界にとっては、日常的にあることでしょう。しかし、一度発覚すると、過去のことがお化けのように出てくるようになりました。今回のことで、『新しい次元』に突入したのです。『データをなぜ出せないのか』『どういう基準で公表するのか』といったマクドナルドの記者会見で出てきた質問に対して、ほとんどの企業は準備ができていないでしょう。
『受難の時代』と言ってもいいかもしれませんが、これからは、その対応が問われます。1つ1つのケースをデータ化して、どういうリアクションをとったのかを証拠として残しておく必要があります。何かが起きたときに、早いタイミングで対応するだけでなく、過去のデータも出せるようにしておかなければいけません」
——マクドナルドは今後、信頼回復に向けて何をすべきか?
「何らかのターニングポイントをうまく乗り越えることができれば、ピンチをチャンスに変えることができます。マクドナルドの場合、社長が帰国したタイミングで、もう1回、記者会見をすることでしょう。今回の会見から1週間や2週間後では遅いです。この数日以内に、マクドナルドの覚悟を示すことが重要になります」
(弁護士ドットコムニュース)