2020年までに有給休暇の消化率を70%にまで引き上げようとしている日本政府。しかし13年時点の取得率は48.8%で、前年比でも1.7ポイントの伸びにとどまっている。
あと7年で残り20ポイント以上を消化する苦肉の策というべきか、政府は企業に対し従業員が有給休暇をいつ取得するのか「時期の指定を義務付ける」労基法改正が検討されているという報道が出て、ネット上で物議を醸している。
「取得に罪悪感」は世界一だが、全体では少数派
読売新聞によると、1月召集の通常国会に提出される労働基準法改正法案の中で、取得時期指定の義務付けが盛り込まれる見込みだという。働き過ぎを防止して、ワークライフバランスの調和を図るのが狙いだ。
日本人は有休取得に対し「罪悪感」を抱く人が多いといわれる。2014年12月に発表されたエクスペディアの国際調査でも、「有休を取る際に罪悪感を感じてしまう」と答えた人の割合は26%で、調査対象の25か国中1位だった。
従来の法律では有休の取得は「従業員からの請求」が前提となっており、罪悪感を抱く従業員任せにしていては、消化率はこれ以上伸びないと政府が考えたのかもしれない。
しかし「罪悪感がある」と答えた人は4人に1人と少数派であり、残りの3人は申請時期を自分で判断していることになる。余計な規制を増やすことで、自由な休みが取れなくなると心配した人も少なくなく、ネット上では反発の声が挙がっている。
「現行法では、ほぼ自由に有休取れるはずなのに」
「ばか言ってんじゃねえ!労働者がいつでも自由に取得できる権利が有給休暇だろーが!」
現状で消化率の低い人は、時期指定で消化が促進される可能性が高いが、すでに有休をしっかり取っている労働者にとっては「取得の自由」が狭められるだけ。「実質的な日数削減」にもなりかねないというわけである。
お隣の韓国では「未消化分の買い取り」が保障されている
また、これまで有休の消化率が低かった人たちからも、強制は「余計なお世話」という声がある。自分自身や子どもが急に病気になった「いざというときのために取っておきたい」のであり、実際予期せぬ病気休業の際に未消化の有休が役立ったという人もいる。
企業の都合で7~8月の夏季にまとめて取得するように指定されるとしたら、「旅費が高くなる」という見方もあった。
朝日新聞の記事では、企業が期間を指定する際は「従業員の希望を踏まえて」とされているが、警戒する人が多い。ただでさえ取得がままならないのに、企業が従業員の希望を聞くとは思えない。「今以上に会社都合が優先されそう」というのだ。
法律で時期指定が義務化される一方で、1人あたりの仕事量が減らなければ「サービス休日出勤」にならざるをえない。消化率の低い中小・零細企業では、ギリギリの人員で仕事を回しているところも多く、「まずは人員確保が不可欠」という指摘もある。
さらには、ネットでは有休取得時期を指定されるぐらいなら、いっそのこと「取得できなかった有休の買い取りを義務化する」方がいいという意見も出ていた。
ちなみに、お隣の韓国では、年度内に使い切れなかった有休を企業に買い取ってもらうことが保障されている。そのため「休むよりお金をもらいたい」という理由で、あえて有休を取らない労働者も多い。日本の中小・零細企業で働く人たちにとっても、実質的な給与アップにつながる可能性のある、こちらの解禁の方がありがたいに違いない。
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