2015年01月05日 13:41 弁護士ドットコム
世界的な建築家としている知られた故・黒川紀章氏が設立した「黒川紀章建築都市設計事務所」が12月中旬、東京地裁に民事再生の手続を申し立てた。負債総額は12億円にのぼるという。
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同事務所は、黒川氏が1968年に設立し、国立新美術館(東京・六本木)やクアラルンプール国際空港(マレーシア)など有名建築の設計を国内外で手がけてきた。報道によると、不況で受注が減り、設計料の回収ができない海外案件も発生したことで、財務状況が悪化。債務が膨らんだという。
今回、同事務所が申し立てた「民事再生」。ニュースでよく見かける言葉だが、具体的にはどのような手続きなのだろうか。近藤暁弁護士に聞いた。
「民事再生手続は、債務者が債務を返済できない経済状態になった場合に、裁判所がかかわって債務を整理する法的な手続です。
この点では、破産手続と共通しています」
借金など債務が返せなくなったときに使う法的手続という意味で「破産手続」と同じということだが、異なるのはどんな点だろう。
「破産手続は、会社の財産を処分して債権者に配当し、その後に会社を解散して消滅させます。そのため、『清算型手続』と呼ばれます」
つまり、その時点で会社が持っている財産を分配して終了、というのが破産ということだ。一方、民事再生は、事業が再生できる可能性がある場合に使われる手続だという。
「債務者の事業を再建して、その収益から債権者に対する弁済をするのが民事再生手続です。このため、『再建型手続』と呼ばれます。
ただし今回の場合は、民事再生手続を利用しつつ事業譲渡を行う『清算型民事再生』という手法がとられるようです。事業譲渡をした黒川事務所は、最終的には清算されることになります」
会社としてはなくなるが、そこが行っていた「事業」は生き残るという形のようだ。黒川事務所が行っていた事業はどうなるのだろうか。
「事業譲渡先は、スポンサーとなる建設大手『日本工営』が子会社として新しく設立する、新『黒川紀章建築都市設計事務所』のようです。名称は同じですが、法的には、現在の黒川事務所と別の会社です。この新会社が、現在の黒川事務所の建築設計業務や資産を譲り受けることになります。
したがって、現在の黒川事務所が行っている事業は、新・黒川事務所のもとで再建を目指すことになります。そして、現在の黒川事務所は、日本工営から受け取る事業譲渡の代金をもって負債を弁済し、民事再生手続完了後、清算されることになります」
近藤弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007 年弁護士登録(東京弁護士会)。主に企業の立場から、消費者法務(消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、PL 法、個人情報保護法など)を中心として、IT法務、労働事件、債権回収、破産・事業再生など幅広い分野を取り扱う。
事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/