2015年01月04日 13:31 弁護士ドットコム
「週末にお酒を飲むのが何よりの楽しみ」という東京都内の会社員Nさん(30代男性)が、「値段表示のないバー」で痛い目に遭った。気持ちよく飲んで、いざ会計という段になったとき、予想よりもはるかに高い料金を請求されたのだ。
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ある週末の深夜、Nさんは友人と一緒に、自宅近くにあるバーに入った。初めての店。メニューは置いてなかったが、カジュアルな雰囲気の「若者向け」の店で、そんなに高い料金をとるようには見えなかった。ところが、1時間でカクテルを2杯ずつ飲んだだけなのに、請求は2人で1万2000円だった。
「せいぜい6000円だろう」と想像していたNさんが、店員に内訳を聞くと、「チャージ料や深夜料金がかかる」と説明された。結局、言われたとおり支払ったNさんだが、事前に何の説明もなかったため、釈然としない思いが残ったという。
値段がわからないバーで酒を注文したら、会計の金額に納得できなくても、支払うしかないのだろうか。値段を聞かずに頼んだら、「いくらでもOK」ということになってしまうのだろうか。消費者問題にくわしい足立敬太弁護士に聞いた。
「飲食店で『食べ物や飲み物の提供を受けて、対価を支払う』ことは、『契約』の一形態と考えられます。
契約ですから、サービスや飲食物の内容、それぞれの値段などについて、双方に合意がなければ成立しません。
合意のない部分については、契約が成立していないので、代金を支払う必要はない、というのが原則になります」
足立弁護士はこのように述べる。では、料理や飲み物の値段が表示されていない場合、料金を払わなくてもよいということだろうか?
「いいえ、近隣の店の相場や社会通念にしたがって、それと同じ程度の代金であれば、具体的な金額を認識していなくても、『その程度の代金負担は許容した』と考えられます。
注文した飲み物の具体的な金額を、客側が理解していなければ合意が成立しておらず、店側は代金を請求できないというのでは、あまりに不便ですからね。
ただし、そのような決め方が許されるのは、近隣の店でも取り扱いがあるような一般的な商品・サービスに限られます」
バーのチャージ料金や深夜料金も、「その程度の代金負担は許容した」場合に含まれるだろうか。
「チャージ料金や深夜料金は、飲み物やサービスの料金に含めるべき、というのが日本の商慣習です。つまり、チャージや深夜料金は、どの店でも徴収しているような一般的な料金ではありません。
そうした名目で料金を徴収する際には、店側が積極的に客側に説明をして、了解を得るべきでしょう。店内のメニューなどで説明がなく、『会計段階で初めて知った』という場合、客側は支払う義務がないと考えます」
足立弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。分かりやすく丁寧な説明だと高評価多数。
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/