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「受験シーズン」到来! 司法試験を突破した12人の弁護士に「勉強法」を聞いてみた

2015年01月03日 11:51  弁護士ドットコム

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クリスマスも正月も関係ない――。大学や高校の「受験」を控えた生徒たちは、志望校の合格を勝ち取るために勉強に励んでいることだろう。社会人のなかにも、新年を迎えて「新しい資格にチャレンジしよう!」と意気込んでいる人がいるのではないか。


一方で「どんな勉強法ならば成果が上がるのか」「継続するためにはどうしたら良いのか」と勉強に関する悩みは尽きない。そんなときは、試験勉強の達人に聞いてみるのが近道だ。


難関の国家試験として知られる司法試験を突破した弁護士たちは、勉強をするにあたって、どんな「工夫」をしてきたのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士12人に、それぞれの勉強法を聞いた。

●弁護士たちのとっておきの勉強法とは・・・?

(溝延祐樹弁護士)「私の場合は、世に言う猛勉強とは逆で、いかに楽な気持ちで勉強するかということに全力を注いでいました。毎日に飽きが来ないように、勉強の際には音楽やラジオを聞いていましたし、勉強場所も自習室だけでなく大学の図書館や自宅のリビングなど頻繁に変えていました。とにかく席について机に向かいさえしてしまえばあとは惰性で勉強できてしまうので、気持ちが楽になるよう楽になるよう意識していました」


(濵門俊也弁護士)「Q 『どのような勉強法で成果が上がるのか』A  何といっても過去問の検討です。どのような意図で出題しているか、どういった人材を欲しているのかという「出題者の視点」が重要です。ご自身でできればなおよいですが、時間もないので、他人の力(教諭、大学教授、予備校講師等)を借りて分析することも大切です。Q 『継続するためにはどうしたら良いのか』A 『何のため』ということを意識すべきです。基本的には自分の意思で始めることですから、止めるのも自分の意思です。継続できるかどうかは自分自身次第です」


(岡田晃朝弁護士)「時間は限られていますし、勉強する量は、その気になれば無限に増えるので、できる限り詳細な計画表を作っていました。1年分を毎日30分単位まで区切って、休憩も、食事やお風呂の時間も詳細に決めてました。もちろん、冠婚葬祭や病気など予定がずれることもあるので、そのずれるであろう想定時間数も計画表に盛り込んでいました。また計画表には、30分ごとに、基本書を何ページ覚えるか、問題を何問解くかなど、詳細に記載してました。弁護士になった今も、計画を立てから行動することは役に立っています」


(寳耒隆弁護士)「およそ試験である以上、そこには必ず傾向があります。私は、その傾向に沿った勉強をすることを旨としていました。では、どのようにその傾向をつかむかということですが、私は手っ取り早く予備校を利用していました。社労士でも、FPでも、司法試験でも、全て予備校を活用しました。ここで大事なことが、『予備校代は自分で支出する』ということです。自分でお金を出すと、無駄にするともったいないので勉強する気になります。嫁から借りたりするとさらに追い込まれて良いでしょう(笑)」


(貞永憲佑弁護士)「最初の時点でゴールを見据えて、1週間あたりのスケジュールまで立ててしまうことが大切だと思います。試験までに使える時間数と試験科目数から、『だいたい1週間で1科目何時間使えるか』を計算して、可処分時間に合ったツール(テキストや問題集)選びをすることができます。またツールの選び方のコツは、試験日まで3周やりきれる量のものを選ぶことだと思います。その上で計画を進めながら、計画実行中に出る苦手分野対策など計画の修正も随時行います」


(河内良弁護士)「予備校から提供される教材をとにかくこなすことに明け暮れ、気がつけば6浪もしてしまいました。7回目の受験前に、『配点を研究する』、『採点者の気持ちになる』というノウハウに出会い、過去問を中心に研究をしたら合格してしまいました。司法修習で、同期修習生となった、『大学在学中合格者→大卒後すぐ司法修習生』という若手に、『どうやったらそんなに若く、短期で合格するのか』と訊ねたところ、『試験なんだから、過去問をやりこむに決まっている』と言われました」


(丸田憲和弁護士)「何かの試験に合格するための勉強法としては、次の3点を十分に検討し把握することが大切だと思い、実行しています。(1)その試験で求められていること(2)(1)のうち、自分に欠けているもの(3)(2)を試験当日までに身につける方法ついつい『自分のやりたいこと』を先にやってしまいがちですが、(1)(2)を把握してそれを克服する努力が重要だと思います。余談ですが、司法試験受験生たるもの一度は根拠法令(司法試験法)を確認しておくことをお勧めします。特に1条及び3条は必読です」


(井上伸弁護士)「1 まず、勉強をしないことを諦める。(楽して合格しようと思う人は、合格したあと伸びないし、死ぬほど努力したら、将来の自信になるし、いざというとき頑張れる。)2 求められている能力を分析した上で、問題傾向や配点や採点方法を細かく研究し、それに応じた力をいかに効率よく勉強するかを考える。3 移動中や食事中に読める暗記用の単語帳のようなものを買うか作る。4 あとはひたすら問題を解く。ただし、ときどき単語帳以外の書籍で理解や記憶を深める」


(桑原義浩弁護士)「私は司法試験を9回受験したクチなので、合理的な勉強方法というのは語れないかもしれません。それでも、それだけ続けていくなかで学んだのは、教科書を端からずっと読むというのではなく、具体的な問題、事例などに応じて学んでいくこと。もちろん、全体を学ぶ機会も必要ですが、頭に残るためには、やはり、具体的事案などを起きながら考えなければ残らないと思います。また、今でもいろいろと学ばなければなりませんが、ひとつのことにかかりきり、というわけにはいかないので、並行して進めています」


(塩見恭平弁護士)「他の先生とは少し違った毛色のお話を。司法試験の勉強にしろ、他の勉強にしろ、自分ができる定量的な努力には限界があります。実力は勉強量と勉強の質の掛け算で算出されるので、量がこなせないこと肯定し、質を上げるために考える努力をすべきです。質を上げるためには、成功された方の意見を聞き、自分の腑に落として自分なりの方法論を身に着けることが肝要です。自分なりの方法論を身に付ける過程で、表面的なところは違っても、本質は何をするにしても同じだということに気付くはずです」


(居林次雄弁護士)「大学で講義を聞き、ゼミで討論をするのが、力の付く方法であると思っています。その後、大学で教鞭をとる機会を与えられることになりましたので、学生に講義やゼミを進める上で、必要な文献や判例を、深く研究しました。また研究者の研究会にも欠かさず出席したことが、討論能力を高め、また判例批評や、小論文などの投稿も続けていましたので、これも実力の付く方法であったかと思っています。このような機会に恵まれたことを感謝しています」


(鐘ケ江啓司弁護士)「司法試験であれば、評価される答案を作成するという目的のために、どういう勉強方法が自分に合うか試行錯誤しながら見つけ出すことだと思います。私の場合、多くの基本書、判例集、論文集、現代史や政治学の本等を乱読して納得いくまで研究して、答練は過去問以外はほぼしないという手法が合いました。なお、予備校は利用していません。短答式は得意でした。コツは、正解を探すのではなく、間違い(嘘くさい)回答を探すことだと思います。一番嘘くさくない回答が正解です」


▼編集後記



回答してくれた弁護士それぞれに「こだわり」が見られたが、いくつか共通する点も見られた。一つは、「試験そのもの」を研究する姿勢だ。過去問を緻密に分析し、勉強する方向を常に修正しながら勉強する姿勢は大いに参考になると感じた。


もう一つは、「時間の使い方」に対するこだわりだ。食事の時間も無駄にせず、限りある時間を最大限に生かそうとする姿勢は、時間のない社会人にとって有用な勉強法なのではないだろうか。


司法試験のような難関試験に合格するためには、われわれが考えもつかないような「特別な勉強法」をしているのではないかと想像していたが、必ずしもそうではないようだ。その勉強法は、意外と万人が参考にできることなのかもしれない。