2015年01月02日 13:51 弁護士ドットコム
2012年の派遣法改正によって原則禁止となった「日雇い派遣」。それに代わって登場したのが、「日々紹介」というシステムだ。この日々紹介をめぐるトラブルが、ネットで注目を集めた。
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日々紹介とは、人材紹介会社が「一日単位」で労働者を求人企業に「紹介」し、紹介手数料をもらうというビジネス。労働者は紹介された企業に「直接雇用」される。そこが、日雇い派遣と違う点だ。しかし直接雇用されるといっても、その期間は1日単位という超短期のため、決して安定した働き方とは言えない。
この日々紹介を利用して紹介先の企業に出向いたのに雇ってもらえず、交通費や時間を無駄にした――そんな内容のブログがこの12月、ネットで反響を呼んだ。ブログの筆者は「日々紹介」というシステム自体に強い疑問を抱いたようで、「派遣法改正は本末転倒」と記している。
日々紹介は、労働者からみると「日雇い」そのものといえるが、法的に問題はないのだろうか。労働問題にくわしい竹之内洋人弁護士に聞いた。
「日々紹介は、紹介先企業が労働者とその都度きちんと労働契約を締結し、その企業が『直接給料を支払う』といったルールがきちんと遵守されているかぎり、違法ではありません。
そのため、これまで日雇い派遣を行ってきた人材派遣会社などが、『日雇い派遣に代わる制度』として、『日々紹介』を売り出しています」
日々紹介は「合法」というわけだ。
「そうですね。しかし『日々紹介』なら合法です、という現状には疑問を感じます。
そもそも、日雇い派遣がどうして禁止されたのかというところに立ち返って考えましょう。
日雇い派遣が禁じられたのは、派遣会社によるピンハネや派遣先の無責任な対応などの問題があったから、だけではありません
その最大の理由は、収入が著しく不安定になり、ネットカフェ難民などのワーキングプアを生み出す温床となっていたからというのが最大の問題だったはずです。しかし現在でも、ワーキングプアの問題は残ったままです。」
日々紹介の利用者の中には「日雇い派遣のほうがましだった」という声もあるようだが・・・。
「日々紹介では、この事例のように紹介先に行っても働けない、すなわち、その日の収入がない、ということも起こりえます。しかし、だからといって、日雇い派遣の時代に戻せばいいという議論は、方向性が逆です。
人はモノではありません。企業の『使い勝手の良さ』よりも、生活の基盤たる雇用の『安定』を重視する法制度に改正されていくべきだと思います」
竹之内弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/