2014年12月31日 11:31 弁護士ドットコム
「私共のペットホテルは、お客様の大切な家族の一員であるペットをお預かりする場所であり、決して、不要になったペットの捨て場ではありません!」。あるペットホテルのウェブサイトに、このようなメッセージが掲載された。ペットを預けたまま、引き取りにこない飼い主に向けたものだ。
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犬や猫を飼っている人にとって、旅行や出張で家を空ける際に重宝するのが、ペットを数日間預けられるペットホテルだ。ところが最近、約束の期日が過ぎても、飼い主が連絡してこないなど、ペットを捨てたとしか思えないようなケースも起きているという。
そんなとき、ペットホテルは、置き去りにされた犬や猫をどう扱えばよいのか。また、こうした事態を防ぐために、どんな対策が考えられるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。
「ペットは法律上、『動産』として扱われるので、ペットホテルに放置された犬や猫は『他人が置き去った物』と考えられます。原則としては、遺失物法により、準遺失物として扱われるべきだと考えます」
坂野弁護士はこのように切り出した。つまり置き去りにされたペットは、法的には「落とし物」と同じようなものというわけだ。そうだとすれば、ペットをどう扱えばいいのか。
「これまでの遺失物法では、たとえ犬のような生き物であっても、警察を窓口として取り扱われてきました。しかし、生き物は財布などと違い、世話をする必要があります。
そこで、2006年に遺失物法が改正されました。動物愛護管理法に規定する『犬または猫』の拾得者が、都道府県等(保健所など)に引き取りを求めた場合、警察に拾得物として届ける義務がなくなりました。
ただし、犬・猫以外の動物は、今まで通り警察に届けなければなりません」
そうなると、ペットホテルとして、まずすべきことは何か。
「まず、飼い主が分かるのであれば、飼い主に引き取りを求めるべきです。
しかし、申込書が偽名で飼い主が不明の場合や、ウソの連絡先が書かれていて連絡がつかない場合は、警察または都道府県が管理する動物愛護センター等に犬や猫を届けるべきでしょう」
動物愛護センターが預かってくれるのだろうか。
「はい。ただし、動物愛護センターに保管されたとしても、条例により殺処分されることもあります」
ペットを預けたままにしておくと「殺処分」もありえるということを、飼い主がしっかり認識しておく必要があるだろう。では、悲しい事態を避けるために、ペットホテルが打てる対策はあるのだろうか?
「たとえば、次のような方法が考えられます。
(1)飼主の身分や連絡先の確認を厳重に行う
(2)第2の連絡先(返還先)なども必要に応じて記載させる
(3)預り金方式を採用して、飼主が引き取りにきた場合に精算する
(4)ペットホテルの約款に、飼主の引き取りが遅れた場合の規定を定めておく」
坂野弁護士はこのように、アドバイスしていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/