2014年12月31日 10:51 弁護士ドットコム
自民・公明の与党が検討していた2015年度の税制改正大綱が12月30日、決まった。そのなかで、愛煙家に気になる「増税」があった。「わかば」「エコー」など6銘柄のたばこについて、税率の軽減措置が見直されることになったのだ。
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対象となるのは、「わかば」「Echo(エコー)」「ゴールデンバット」「しんせい」「うるま」「ヴァイオレット」の6銘柄。旧3級品と呼ばれるものだ。これまで通常のたばこ税の半分程度に抑えられていたが、そのような軽減措置は段階的に廃止されることになった。
税率変更により、たばこの値段が上がることが想定されるが、そもそも、なぜ一部のたばこにだけ、こうした税の優遇措置がとられていたのだろうか。また、見直されることになった理由はなにか。久乗哲税理士に聞いた。
「たばこ税は、酒税などと同様に嗜好品への課税という一種の『ぜいたく税』でした。ですから、たばこ税の歴史は、国の財政状況に大きく影響を受けてきました。
たばこの専売制がとられたのは、日清戦争後の財政再建のためです。日露戦争のときには、戦費調達のために、輸入販売なども専売制の対象になりました。戦後は、たばこ消費税が徴収されるようになり、1989年の消費税導入に伴って『たばこ税』という名称に変わりました」
なぜ、「わかば」などの銘柄は、税率が低かったのだろうか。
「旧3級品とよばれるものは、普通のたばこよりも品質が落ちます。ぜいたく品とまでは言えないので、たばこ税の税率を軽減させる措置がとられていたのです。
この考え方は、酒税において、ビール、発泡酒、第3のビールの税率が違うのと同じような考え方に基づいていると思われます」
このように久乗税理士は説明する。
「たばこ税が嗜好品に対する『ぜいたく税』であるとの考え方に立てば、旧3級品のたばこに軽減税率が適用されていても、不思議ではありません。ただ、現在のたばこ税は、少し課税の根拠が変わってきたように解釈されています」
どう根拠が変わったのだろうか。
「たばこは、喫煙する本人や周囲の人の健康を損なう恐れがあるため、『罪悪税』としての解釈が強まりました。高い税金を取ることで、健康被害にあう人を減らすのが目的になったのです。
2010年に、当時の鳩山由紀夫首相が『健康目的のために喫煙者を減らす』と発言をしたことが、発端になっています」
同じ税金でも徴収する意味がここまで変わるのは興味深い。
「課税の目的が変わった今、旧3級品であっても、健康を阻害させるという意味においては、ほかのたばこと同じです。ですから、税率を見直すことになったのでしょう。
たばこ税と同様に、健康を阻害させる行為を減らす意味での『罪悪税』として、興味深いものがありますよ。最近、米国カリフォルニア州バークリー市では、『ソーダ税』を導入することが決まりました」
久乗税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)