2014年12月30日 11:51 弁護士ドットコム
師走に入り、酒気帯び運転で摘発されるケースがあいついでいる。岡山県倉敷市では12月中旬、乗用車との衝突事故を起こした消防士の男性が、酒気帯び運転の現行犯で逮捕された。
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報道によると、事故が起きたのは午前11時すぎだったが、男性は前日の夜に日本酒を飲んでおり、「酒が残った状態で運転した」と認めているという。前の晩に飲んだ場合でも「酒気帯び運転」として摘発されるケースがあるのだ。
忘年会や新年会で、お酒を飲む機会が多くなるこのシーズン。「飲んだら乗るな」は当然だが、そもそも、どういう状態で運転すると「酒気帯び」とされるのだろうか。何か基準のようなものがあるのか。阿部泰典弁護士に聞いた。
「酒気帯び運転は、道路交通法65条1項で禁止されています。同条は『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない』と規定しています。『酒気を帯びて』とは、そうした状態が顔色や呼気など『見た目』でわかる状態のことをいいます。
見た目で「お酒を飲んでるな」と警察官が考えたら、逮捕されてしまうのだろうか。
「酒気を帯びての運転が、ただちに刑事罰を受けるわけではありません。
要件の違いで、『(政令数値以上)酒気帯び運転罪』と『酒酔い運転罪』とに分けられます」
阿部弁護士はこう述べる。両者はどう違うのだろう。
「先ほどの『酒気を帯びて』という要件は、両者に共通します。
『(政令数値以上)酒気帯び運転罪』は、それに加えて、『血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上』または『呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上』のアルコールを保有していた場合に該当します。この数値は、道路交通法施行令で決まっています。
酒に酔った状態で車を運転したとしても、血中アルコールが政令数値以下であれば、『(政令数値以上)酒気帯び運転罪』には該当しません」
では、「酒酔い運転罪」はどうだろうか。
「『酒酔い運転罪』は、血中アルコールが政令数値以下であっても、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車を運転すれば該当します」
どんな場合に、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれ」があるといえるだろう。
「たとえば、前の晩にお酒をたくさん飲んで、『頭が痛い』『吐き気がする』あるいは、そこまでいかなくても『体がだるい』という二日酔い状態での運転は、該当する可能性があります。
そのような場合、車の運転は控えたほうがよいでしょう」
最近問題視されている、自転車についてはどうだろう。
「『酒気帯び運転罪』は軽車両、つまり自転車は除くとされています。しかし、『酒酔い運転罪』は『自転車は除く』とされていません。
つまり、正常な運転ができないおそれがある状態で運転すれば、たとえ自転車であっても『酒酔い運転罪』が成立します。
最寄りの駅から自宅まで自転車通勤・通学をされている方は少なくないと思いますが、お酒をたくさん飲んだ帰りには注意をしたほうがよいでしょう」
阿部弁護士はこのように指摘していた。お酒を飲む機会が多いこの時期、飲酒をするなら乗り物の運転は厳に慎むべきだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
阿部 泰典(あべ・やすのり)弁護士
平成7年4月 弁護士登録。平成14年4月 横浜パーク法律事務所開設。平成21年度 横浜弁護士会副会長。平成24年、25年度 横浜弁護士会法律相談センター運営委員会委員長、横浜弁護士会野球部監督
事務所名:横浜パーク法律事務所
事務所URL:http://www.yokohama-park-law.com/