2014年12月29日 14:31 弁護士ドットコム
家族に暴力を振るい、金を脅し取る兄を家から追い出せるか——。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、こんな相談が寄せられた。
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投稿者によると、問題が起きているのは、知り合いの女性の家庭だ。その女性の兄(20代)は働かないで、毎日パチンコ三昧の生活を送っているうえに、母親と妹に暴力を振るい、さらに金を脅し取っているという。絵に描いたような「ダメ男」の兄に悩まされている女性は「なんとか兄を家から追い出せないか」と投稿者に相談したのだ。
だが、家族は本来、一緒に暮らして助け合うべきものだ。妹が兄を家から追い出すことはできるのだろうか。もしできるとしたら、具体的にどうすればいいのか。石井龍一弁護士に聞いた。
「家族内のトラブルに関しては,家庭裁判所に『親族関係調整の調停』を申し立てることができます。今回のケースでは、お兄さんを相手にこの調停を申し立て、家庭裁判所で、調停委員の関与のもと、家から出て生活をしてもらうよう話し合いをするという方法があります」
家庭裁判所が話し合いの仲立ちをしてくれるとは心強い。
「ただ、これはあくまでも調停です。調停には法的強制力はありません。ですから、お兄さんが話し合いに応じなければ、解決になりません」
なにか強制力のある解決策はないだろうか。
「たとえば、こんな考え方はどうでしょう。家に誰を住まわせるかは、その家が持ち家であれば所有者、賃貸であれば賃借人が決めることができますよね。もし、お母さんが所有者や賃借人であれば、お母さんは、お兄さんについて『家に住まわせない』と決めることができます」
法的な問題とどうかかわりがあるだろうか。
「お母さんが、その家の所有者や賃借人だとしましょう。家賃を取らずに家族をその家に住まわせている場合、お母さんと家族の間には『使用貸借』という契約が存在していることになります。そして、使用貸借契約の前提となる当事者間の『信頼関係』が破たんしている場合、契約の解除が認められることがあります」
今回の場合、信頼関係は、すでに破たんしているようだ。
「ええ。お兄さんは、家族に暴力を振るったり、お金を脅し取るなどという問題行動を繰り返していますね。こうした場合は、客観的に見ても、お母さんがお兄さんに家を使用させる前提としての『信頼関係』が、すでに破綻していると認められるでしょう。
ですから、今回のようなケースでは、お母さんは使用貸借契約を解除して、お兄さんに家から出て行くよう請求することができます。もし、お兄さんがこの請求にも応じなければ、民事訴訟を提起する必要があります」
石井弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/