2014年12月28日 12:01 弁護士ドットコム
年の瀬の飲み会は羽目を外しがちだが、うっかりすると大変な目にあう。東京都内のIT企業で働くHさん(28)に不幸が襲いかかったのは、職場の忘年会に参加した「帰り」のことだった。楽しさのあまり終電すぎまで居残ってしまい、タクシーで帰ることになったHさんに悲劇は起きた。
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後部座席に乗り込み、行き先を告げ、しばらくボーッとするHさん。暖かい我が家まであと30分くらい・・・。そう気を抜いた瞬間、突如として飲み過ぎによる尿意に襲われた。必死に我慢しようとしたが、あっという間に限界に達し、タクシーを止めるまでもなく、車内で「失禁」してしまったのだ。
このあとHさんは、運転手からこっぴどく怒られたうえ、「クリーニング代を払え!」と要求されたそうだ。こんな場合、クリーニング代を支払うしかないのだろうか。中村憲昭弁護士に聞いた。
「今回の場合、Hさんはクリーニング代を支払う必要があるでしょう。さらに、クリーニングが終わるまで営業車を稼働できなかった分の損害(逸失利益)も、支払わなければならない可能性があります」
中村弁護士はこう述べる。どうしてなのだろうか。
「民法上、過失によって他人に損害を与えたら、それを賠償しなければなりません。
そもそも、お酒をたくさん飲むとおしっこに行きたくなるものです。そして、いつか尿意の限界に達すると予見できるでしょう。それにもかかわらず、Hさんがトイレに行かずにタクシーに乗ったとしたら、過失があると言わざるをえません」
Hさんは支払いを拒否できないのだろうか。
「個人タクシーではなくて、会社のタクシーの場合、被害者は運転手個人ではなく、タクシー会社です。
したがって、運転手からの直接的に請求された場合、『被害者である会社と話をさせてほしい』と述べることは可能です」
しかし結局は、会社から請求されてしまうということか・・・。
「そうですね。さらに時間が経てば経つほど、請求額が大きくなる可能性があります。運転手からの請求がよほど法外なものでない限り、その場での支払いに応じたほうがよいでしょう。
ただし、手書きでもいいので、クリーニング代を支払った、弁償したという領収証をもらいましょう。後日、タクシー会社から二重の支払いを求められたら、目も当てられませんからね」
中村弁護士はこのようにアドバイスしていた。年末年始に飲み会に参加する人も多いだろうが、タクシーで遠くまで帰る場合は、乗車前にトイレに寄っておいたほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中村 憲昭(なかむら・のりあき)弁護士
保険会社の代理人として交通事故案件を手掛ける。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。そのほか、離婚・相続、労働事件、医療関連訴訟なども積極的に扱う。
事務所名:中村憲昭法律事務所
事務所URL:http://www.nakanorilawoffice.com/