2014年12月27日 13:21 弁護士ドットコム
この冬の年末年始は、12月27日(土)から、1月4日(日)まで、最大で9連休のまとまった休みをとる人が多い。だが、年末年始のうち「国民の祝日」と定められているのは、元旦の1日だけ。カレンダー上では、平日が5日間もあるのだ。
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この年末年始休暇の平日分について、有給休暇の取得を会社から求められている人もいるようだ。ネットの相談サイトには「有給休暇がすぐになくなってしまいます」「このような有給休暇のとりかたは有りでしょうか?」という疑問が投稿されていた。
カレンダー上は「平日」ということであれば、こうした有給休暇の取り方を会社から指示されても、逆らうことはできないのだろうか。それとも、こんな指示をする会社は「ブラック企業」と考えたほうがいいのか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。
「年次有給休暇(有給休暇)の取得は労働者個人の権利です(労基法39条)。理由のいかんを問わず、取りたいときに自由に取れるのが原則です」
野澤弁護士はこのように述べる。では、年末年始に有給休暇を取るよう、会社が指定してもいいのだろうか。
「労働者の権利である有給休暇の取得時期について、使用者が自由に指定することはできません。使用者が勝手に、正月休みを有給休暇に指定することは、労働基準法に違反します」
ただ、一定の条件を満たした場合、会社が有給休暇取得の時期を指定できる制度があるようだが・・・。
「『計画年休制度』のことですね。
これは、一定の条件のもとで、労働組合もしくは労働者の代表と使用者が、書面による協定を結べば、労働者個人の年休権行使を拘束することができるという制度です」
それでは、やはり会社が年末年始を「有給休暇の取得時期」として指定しても、問題ないのか。
「たしかに、こうした労使協定で『正月休みに有給休暇を消化する』と定めれば、それは有効です。
ただ、『計画年休制度』はあくまで、有給休暇取得を促進するためを設けられた制度です。
有給休暇がなかなか消化できない理由として、同僚や上司、職場の雰囲気への気兼ねから取得をためらう傾向があることから、この制度が導入されました。
『正月休みに有給休暇を消化する』といった労使協定を結ぶことが、有給取得を促進するという計画年休の制度趣旨に合致するのかは、おおいに疑問です」
そもそも、年末年始はオフィスや店舗自体を閉めている会社も多いだろう。そのような場合でも、年末年始を有給休暇に指定することは許されるのだろうか。
「有給休暇を取得する意味は『本来働かなければならない日に働く義務がなくなるが、それでも賃金が請求できる』というものです。
したがって、会社自体が正月休みで休業している時期には、労働者が有給休暇を取得する意味はありません。もともと『働く義務がない日』に有給休暇を充てようというわけですから」
つまり、もともと休日であるはずの正月休みに有給休暇を取得させることは、労働者からすると「その分だけ有給休暇を減らされたのと変わらない」ということになるわけだ。
「そうです。そうした取扱いは、法律で決まっている有給休暇の日数を与えないのと実質的に同じと言えます。6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となる可能性があります(労基法119条)」
野澤弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
野澤 裕昭(のざわ・ひろあき)弁護士
1954年、北海道生まれ。1987年に弁護士登録。東京を拠点に活動。取扱い案件は、民事事件、刑事事件、労働事件、相続・離婚事件等家事事件。正確、最善をモットーとしている。趣味は映画、美術鑑賞、ゴルフなど。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/