DVD『アイルトン・セナ 追憶の英雄』の発売を記念したトークイベントとKAMUI TV初の公開収録が、12月26日に東京・代官山の蔦屋書店で行われ、2014年のF1をケータハムで戦った小林可夢偉、そしてモータースポーツジャーナリストの川井一仁が登場し、セナや2014年シーズンについてのトークを繰り広げ、集まったファンを楽しませた。
『アイルトン・セナ 追憶の英雄』は、セナ没後20年の今年、イタリアのテレビ放送局Raiとガゼッタ・デロ・スポルト紙が制作した、全10巻からなるDVDドキュメンタリーシリーズ。全国のCD・DVD取り扱い店やF1グッズ専門店などで、12月26日より販売が開始された。
トークショーの前半は、フジテレビのF1解説でもお馴染み、川井一仁氏がセナについて熱く語り、「初めて扱うラジコンを、手足のように自由自在に扱った」などという、セナの才能の一端を感じさせる話題を披露した。
なお川井氏は、セナの事故が発生したその瞬間、ウイリアムズのピットガレージ内で、セナの弟のレオナルド氏と共にレースの展開を追っていた。そしてレース後にはテレビ中継のスタッフと共に現場を訪れ、セナに酒を捧げたという。この他にも、川井氏ならではの、セナについての数々のエピソードを披露した。
トークショーの後半には、2014年のF1シーズンをケータハムで戦った小林可夢偉が登場。リラックスした表情で現れた可夢偉は、川井氏と共にシーズンを振り返った。
2014年のケータハムが苦戦した理由について可夢偉は、「サイドポンツーンが大きすぎたため、一度マシンの左右に分かれた空気が、リヤで中央に戻ってこないんですよね。普通はボディに沿うように戻ってきて、ダウンフォースを発生させるんですが、ケータハムのマシンはそれがなかった。他のドライバーが『ケータハムの後ろを走ると、マシンが不安定になる』と言っていたらしいですが、その意味もここにあるんだと思います」と語っている。
さらに可夢偉は、「BBW(ブレーキ・バイ・ワイヤ)のセッティングなど、ほとんど僕が開発したんですよ」と、今季のケータハムのマシンの開発にも大きく貢献していたことを明かした。
また、先日スーパーフォーミュラをテストしたことで、「今年はすごいクルマ(ケータハムのF1)に乗っていたんだということを実感しました」という。
「(ケータハムに)乗っている時は『これが普通なんだろう』と思っていたんですけどね。スーパーフォーミュラは、パワーこそF1には劣りますが、とても乗りやすい。だから多くのドライバーが、『スーパーフォーミュラは面白い』と言うんだと思います。タイヤも全然違います。F1タイヤは、一瞬でも滑らせてしまうと、すぐにグリップ力が低下してしまうんですが、スーパーフォーミュラのタイヤはそういうこともない。20~30周走ってもタレないんですよ」
Q&Aのコーナーでは、会場に集まったファンからの質問にも回答。「なぜ(2010年の)日本GPのヘアピンで、あれだけ多くのオーバーテイクができたのか?」という質問に対しては、「実は、鈴鹿での経験があんまりなかったので、どこがオーバーテイクポイントなのか、分かっていなかった」のだという。日本GPで好成績が残っていることについても、「『母国だから』と思って走っていたわけじゃないんです。ただ、うまく集中できた時は、“無”の状態で走っている。そうすると、レースがすごく短く感じるんです」と明かした。
「シーズン開幕前に資金が豊富にあったなら、どのチームに乗りたかったですか?」という鋭い問いに関しては、「現実的に考えれば、ウイリアムズでしょうね。ウイリアムズが表彰台の常連になるなんて、開幕前は分からなかったですが……。とにかく、メルセデス製のパワーユニットを使っているマシンに乗るということが重要だったと思います。『メルセデスのエンジニアと話をすると楽しい』と言うドライバーがいたんですよ。メルセデスのエンジニアは、パワーユニット単体ではなく、マシン全体を考えて話をするらしいんです。これが、他のメーカーのエンジニアとは違うところですよね」と語っている。
ちなみに、可夢偉はセナについて、実はあまり知らないのだそうで、「DVDを観ないと」と話していた。
トークショー後には、可夢偉のオフィシャルサイトなどで公開されている“KAMUI TV”の公開収録を実施。集まった100人のファンを前に、トークショーに続いて川井氏と共に今季を振り返り、そして去就が注目される2015年シーズンについても言及した。この模様は、12月28日から“KAMUI TV”にて公開される予定。いつにも増して要チェックの内容となっているはずだ。