2014年12月24日 23:51 弁護士ドットコム
事前収賄罪などの罪に問われている岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長に対する最終弁論公判が12月24日、名古屋地裁であった。弁護側の最終弁論につづいて、藤井市長による「最終意見陳述」がおこなわれた。
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その全文は次のとおり。
6月24日、あの日から、奇しくも本日でちょうど半年となりました。あらためて、6カ月前と変わらず、むしろ取り調べや、この厳粛なる裁判所での公判が進むにつれ、自分自身、強く確信を得た上で、逮捕事実は一切ないことをここに断言させていただきます。
美濃加茂市長として2年目を迎え、市民の方々がどのような感触をお持ちになっているのか、市役所内の雰囲気はどう変わったのか、自分自身が掲げたマニフェストは実現に向けて進んでいるのかなど、私の市政に対する期待と同時に多くの市民の方々と築き上げてきた希望が一瞬にして打ち崩されようとしました。
政治家という概念に対しては、さまざまなお考えをお持ちの方がいらっしゃると思いますが、特に私たちの住むまちのような市町村の首長や議員は、政治というダイナミズムや価値観より、一人ひとりの住民、市民の方々と意見を交わし、ときには新たな気づきをいただき、ときには啓蒙に努め、日々少しずつ信頼を得ながら、地域の将来を信じて一歩一歩活動しています。
それは役所内でも同じことであり、組織の論理ではなく、いくらトップであろうが、一人ひとりの職員と思いをともにし、お互いを信頼してこそ、市民のための仕事ができると考えています。
逮捕当初、担当の警察官の方は「まだ若いんだから、早く認めて出直せばいいじゃないか」と軽い口調で何度も言いました。論告の中では、私が「市民の信頼を裏切った」とありました。その軽々しく使われ、彼らが踏みにじろうとしている信頼というものを得ることがいかに難しいかを、私たちは知っているからこそ、今回の嫌疑についてはまったくの無実であると心から断言できます。
今回の事件の当事者は、私一人では決してありません。
多くの市民の方々、支援者の方、そして仲間、家族が署名集めに必死になってくださいました。21154名の方が署名をしてくださいました。
あるおじいさんは、署名集めに朝から晩まで団地内や親戚関係、昔の友人を頼って、こう言いながら走り回ってくれたそうです。「何度も会って話をしたが、お金を受け取るなんて信じられない。もう一度本人と会うまでは、自分自身の納得がいかない」
市役所においては、日に何十件もの罵声に近い問い合わせの電話や、窓口では不必要な嫌みを言われながらも歯を食いしばり、職務をまっとうしてくれた職員がいました。
中には十数回も毎日のように取り調べに呼び出され、不本意な調書を取られたといまだに嘆かれる職員もいます。
若い職員はこう言いました。「私は市長を信じているし、信じるべき立場だと思います。しかし、市民の人からも市外の人からも、市長は大丈夫かと聞かれます。明確に堂々と答えられる日が早く来てほしい」
私だけでなく、この事件の影響を被ることとなってしまった多くの人が、納得できるような公正な判決をお願いしたい気持ちでいっぱいです。
また、期せずして、私たちは今回の事件の当事者となりました。
失ったものはいくつもあります。取り戻せないものがあることも知っています。
しかし、このようなことが二度と繰り返されることなく、社会が一歩でも前進するのであれば、私たちはこの一件を乗り越えることができるのではないかと思います。
もう二度とこのような事件が起こらないことを切に願います。
藤井浩人
(弁護士ドットコムニュース)